セッション情報 パネルディスカッション5(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

非侵襲的肝病態評価法の適応と限界

タイトル 肝PD5-15:

Gd-EOB-DTPA造影MRIを用いた肝機能評価に与えるSNPsの影響

演者 大久保 裕直(順天堂大練馬病院・消化器内科)
共同演者 國分 茂博(順天堂大練馬病院・消化器内科), 宮崎 招久(順天堂大練馬病院・消化器内科)
抄録 【背景と目的】EOB造影MRIの背景肝造影効果が肝機能評価法として用いられつつある.一方,EOBはOATP1B1,OATP1B3により肝細胞内へ輸送され,各々の遺伝子には輸送活性に影響するSNPsが報告されている.今回,EOBを用いた肝機能評価において,SNPsの与える影響につき検討した.【対象と方法】対象は2011年7月から2012年1月までにEOB-MRIが施行された226人(ICG施行は105例).Child-Pugh score(CPS) 5/6/7/8以上;152/39/29/6.20分後の肝細胞相にて,背景肝12点と脾内にROIを置き,肝内信号値平均を脾信号値で除してmean Quantitative Liver Spleen Contrast Ratio (mQLSC)を求めた.SLCO1B遺伝子は388A>Gと521T>CのSNPsの組合せからSLCO1B1*1a,*1b,*5,*15のハプロタイプに群別し,SLCO1B3(334T>G)とその発現を制御する転写因子FXR遺伝子(NR1H4)(-1G>T)についても解析した. 【結果】ICG施行例の線形回帰分析では,mQLSC=2.27-0.020×ICG-R15の回帰式がえられた(r=-0.574).ICG値からこの式で求められるmQLSC推定値に比し,mQLSCが1SD以上大きい割合は,輸送活性亢進が報告されているSLCO1B1*1b保有群は非保有群に比し有意に高値であった.次に全226名の解析では,mQLSCはCPSの上昇とともに有意に低下した.SLCO1B1*1b保有群のmQLSCは,非保有群に比し有意に高く,CPS5点のみの検討でも同様であった.NR1H4, SLCO1B3の遺伝子多型はmQLSCに影響を与えず,多変量解析にてmQLSCに関与する独立した因子はCPSとSLCO1B1*1bハプロタイプの有無のみであった.そこで,SLCO1B3転写活性低下が報告されているNR1H4 -1G>T多型を有する患者を除き野生型117名でmQLSCを検討すると,SLCO1B3 T/T群はG/G群に比し有意に高値を示し,CPS5点のみの検討でも同様であった.多変量解析にてmQLSCに関与する独立した因子として,CPSに加えSLCO1B3 334T>G Gアレルの有無が抽出された.【結語】EOB-MRIは非侵襲的肝機能評価法となりうるも,その正確な評価にはSLCO1B1, SLCO1B3遺伝子のSNPsの影響を考慮する必要性が示唆された.
索引用語 EOB-MRI, SNP