セッション情報 パネルディスカッション6(消化器がん検診学会・消化器内視鏡学会合同)

胃がん検診の有効性と精度の現状-X線検診 vs 内視鏡検診-

タイトル 内PD6-1:

対策型胃がん検診としての胃X線検診と内視鏡検診の有効性と精度管理の課題

演者 加藤 勝章(宮城県対がん協会がん検診センター)
共同演者 島田 剛延(宮城県対がん協会がん検診センター), 渋谷 大助(宮城県対がん協会がん検診センター)
抄録 2006年の有効性評価に基づく胃がん検診ガイドラインでは,内視鏡検診の死亡率減少効果は証拠不十分とされ,胃がん検診としては胃X線検査が推奨されている.しかし,現行の胃X線検診にも,受診率の低迷や固定化,読影医不足,設備の老朽化,高齢受診者におけるバリウム誤嚥や排泄困難などの偶発症の増加など様々な問題がある.さらに,胃X線検査精度についても,進行癌については示現率も向上しほぼ9割以上のがん症例で正診を得ているが,早期がん発見率も向上したとはいえ,実際に病変が示現されているものは半数程度で,他部位チェック(やぶにらみ)も多い.高濃度バリウムの導入や基準撮影法の策定,I.I.-DRやPFDなどの登場で胃X線検査の精度向上は図られてはいるが,近年の内視鏡機器の進歩を考えると,胃X線検査による検診精度については若干過大評価されているきらいがある.一方,内視鏡検診については,死亡率減少効果について胃がん登録を使った論文報告なども発表されているが任意型検診のデータが中心であり,対策型検診における検証はまだ不十分である.内視鏡検査は胃X線検査に比べれば感度も良く,高率に胃がんを発見できると期待されるが,胃X線検査を圧倒的に凌駕するほどの精度では無い.近年の内視鏡機器の進歩はめざましく,経鼻内視鏡やハイビジョンビデオスコープなどの登場で検査精度は向上し被験者の忍容性も良好となった.その一方で,高齢者の微小癌など癌死亡に関係の無い過剰診断が増加し,受診者に不要な治療を強いるなどの不利益が危惧される.また,内視鏡検診には医療資源の偏在,検査精度の施設・地位間格差,死亡事故を含む偶発症が多いといった問題もある.対策型検診では有効性の確立した方法を実施し,受診者の不利益を最小限にとどめることが原則である.胃X線検診にしても内視鏡検診にしても,検診としてのアセスメントとマネジメントについて問題点を明らかにし,地域の実情に応じた胃がん検診体制を検討すべきと考える.
索引用語 胃がん検診, 精度管理