セッション情報 パネルディスカッション6(消化器がん検診学会・消化器内視鏡学会合同)

胃がん検診の有効性と精度の現状-X線検診 vs 内視鏡検診-

タイトル 検PD6-4:

H.pylori関連慢性胃炎や食道がんリスクを考慮した胃がん検診

演者 大洞 昭博(朝日大村上記念病院・総合健診センター)
共同演者 奥田 順一(朝日大村上記念病院・総合健診センター), 小島 孝雄(朝日大村上記念病院・総合健診センター)
抄録 【目的】近年,胃がん検診における内視鏡検診が増加しているが,未だX線検診が主体である.全てを内視鏡にすることは不可能であり,当院が考えるX線検診と内視鏡検診の選択基準について検証した.【対象と方法】2003年から2012年までに当院で行った上部消化管X線検診98030例(男性59539例,女性38491例,平均48.2歳)と内視鏡検診10340例(男性7692例,女性2648例,平均52.2歳)を対象とし,その期間に発見された胃癌症例の背景胃粘膜から萎縮の進行と慢性胃炎の進展を基にした検診法の選択について検討した.X線検診におけるH.pylori(以下,HP)関連慢性胃炎の診断は,血清HP抗体と比較し奥田らが報告した,胃X線像における胃底腺粘膜の襞の幅(4mm以上をHP陽性,4mm以下HP陰性)・胃底腺粘膜胃小区型(F0型HP陰性,F1型HP陽性)・腺境界型(木村・竹本分類C1~O3の6分類,C1はHP陰性)で行った.感度97.4%,特異度74.1%.内視鏡検診時の診断は腺萎縮境界や慢性胃炎の内視鏡所見で診断した.【結果】発見されたがんは,X線検診72(胃71・食道1)例(発見率0.073%)と内視鏡検診22(胃19・食道3)例(0.213%).内視鏡検診の方が有意(p<0.001)にがん発見率は高かった.進行がん率は,胃癌(X線検診:内視鏡検診=23.9%:21.1%),食道癌(100%:0%).有意差はなかったが,内視鏡検診の方が早期がんで発見される割合が多かった.胃癌症例の腺萎縮境界はC1が0%,C2~O1が23.6%,O2~O3が76.4%と,胃癌はすべてHP陽性と予測される萎縮した胃粘膜で認められていた.全ての食道癌症例で喫煙,飲酒,フラッシング反応等の食道がんリスクを持っていた.【結論】全例,胃がん検診は内視鏡検診が望ましいが,現実的ではなく,ABC検診単独では,食道癌発見は困難である.そこで初回は従来のX線検診を行い,異常がなければ,X線検診を定期的に行う.しかし,HP感染による腺萎縮境界の進行や慢性胃炎を認める場合や食道癌リスクが高い場合には,内視鏡検診を行っていくべきである.
索引用語 胃がん検診, 内視鏡検診