抄録 |
【背景】胃がんの対策型検診であるX線検診の受検率は減少の一途を辿っている.胃がんの発病にはピロリ菌が深く関わっていることは既知であるが,ピロリ菌感染は若年世代では著減しており,X線検診が将来も効率的に機能するか疑問がある.費用対効果の面からも,時代に即した新たな対策型胃がん検診システムの構築は急務である.【目的】「X線検診」と「ピロリ菌抗体+ペプシノゲン測定・内視鏡検査(以下,血清リスク検診)」を無作為割付して両群間の比較を行う(第3次対がん総合戦略研究事業).【方法】平成23年度から2年間の対策型胃がん検診予定者で,適格条件を満たした研究参加同意者を対象とした.最小化法(層別化因子:性別と年齢;60歳未満と60-74歳)によってX線検診群とリスク検診群に割り付けた.割付後6年間追跡を行い,最終年に参加者全員に内視鏡検査を実施する予定である.本会では本試験の進捗状況を報告する.【成績】参加同意率は41%(同意1,207人/呼び掛け2,962人)であった.不適格登録1名を除いた1,206名はX線検診群と血清リスク検診群それぞれ603名に割り付けられた.両群のABC法による亜分類は,X線検診群でA:33%,B:23%,C:37%,D:7%,血清リスク検診群ではA:33%,B:25%,C:36%,D:6%で両群に差を認めず,無作為化は成功したと考える.有害事象はX線検診でのみバリウムの誤嚥を1例(0.17%)に認めた.血清リスク検診群からのみ胃がんを3例(0.5%)検出した.【結論】本試験は1,000例を越える参加者を得て,無作為化も良好に行われ進捗している対策型がん検診としての血清リスク検診の費用や問題点は本試験完遂後には明らかになると考える.(UMIN試験ID:UMIN000005962) |