抄録 |
目的: 分枝型IPMN経過観察例における自然史を解明し,その癌化予測因子を同定すること.対象: 当施設で画像的に分枝型IPMNと診断して6ヵ月以上経過観察した371例.方法1. 対象の経過観察期間における画像変化率と癌化率,2. 候補因子(年齢,性,嚢胞径,嚢胞径変化率,壁在結節高,壁在結節高変化率,主膵管径,主膵管径変化率,多発,隔壁肥厚様所見)の中から単変量,多変量解析を用いて由来浸潤癌と併存癌別に癌化予測因子を同定する.内訳: 観察期間中央値3.2年(0.5-21.9年),初診時所見は年齢66.2±9.7歳,,嚢胞径20.7±11.3 mm (30mm以上: 21.6%),壁在結節有り7.8%,主膵管径3.0±1.3mm,隔壁肥厚様所見9.2%,多発例47.7%であった.結果1: 対象の画像変化率は,嚢胞径変化0.89±1.68mm/year,壁在結節高変化0.13±0.63mm/year,主膵管径変化0.11±0.29mm/yearであった.癌化した症例は由来浸潤癌9例(2.4%),併存癌7例(1.9%)で,由来浸潤癌,併存癌,および浸潤癌例の5年累積発症率はそれぞれ2.8%,3.5%,6.3%であった.結果2: 由来浸潤癌のリスク因子として,初診時嚢胞径≧30mm(p=0.031, OR: 6.9, 95%CI: 1.2-39.4),壁在結節高変化2.5 mm/year以上(p=0.002, OR: 27.8, 95%CI: 3.4-229.3),隔壁肥厚様所見(p=0.035, OR: 5.4, 95%CI: 1.1-25.7)が抽出された.由来浸潤癌9例中5例(55.6%)は壁在結節が経過中陰性であったことを考慮し,結節あり(n=50)と結節なし(n=321)にsubgroup化し,同様に解析した.前者では多変量解析で壁在結節高変化2.5 mm/year以上(p=0.002)のみが抽出され,後者では単変量解析で初診嚢胞径,最終嚢胞径,および隔壁肥厚様所見が有意であった(それぞれp<0.001,p<0.001,p=0.012).一方,併存癌については,単変量解析で有意であったのは多発(p=0.005)のみであった.結語: 由来浸潤癌の5年癌化率は2.8%で,そのリスク因子は結節の有無で違いがみられた.一方,併存癌の5年癌化率は3.5%で,多発例が併存癌の高リスク群である. |