セッション情報 パネルディスカッション7(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

IPMN新コンセンサス診療ガイドラインの検証

タイトル 消PD7-4:

壁肥厚は" worrisome features" か?

演者 肱岡 範(愛知県がんセンター中央病院・消化器内科)
共同演者 原 和生(愛知県がんセンター中央病院・消化器内科), 水野 伸匡(愛知県がんセンター中央病院・消化器内科)
抄録 【背景および目的】新たなIPMN国際ガイドラインの「BD-IPMNの診療方針選択のアルゴリズム」の中に「壁肥厚」所見が" worrisome features"として組み込まれた.しかし,壁肥厚がどの程度,悪性診断に寄与しているかについての詳細な検討はこれまでに報告されていない.そこで切除検体の壁肥厚径(WT)を測定し,壁肥厚径が良悪性の指標となる因子かを検討した.【方法】2012年までに切除されたIPMN 131例のうち12例の主膵管型および24例の浸潤癌を除いた95例を対象とし,全切除例の病理標本を用い,壁在結節径(MN)および壁肥厚像を計測した.病理結果の腺腫を良性,上皮内癌~微小浸潤癌までを悪性とした検討した.【検討項目】1.壁肥厚径 2. 壁肥厚径と壁在結節径のROC曲線下面積 3. 壁肥厚径と壁在結節径の組み合わせによる悪性度診断【結果】1.壁肥厚径は1.8mm(0.5-5mm)であった.2.壁肥厚径と壁在結節径の単変量でのAUCはそれぞれ,0.897および0.700であり,壁肥厚径が壁在結節よりも高い悪性予測因子であり,壁肥厚を2.5mmをカットオフとした場合,感度77%,特異度81%,正診率80%であり,壁在結節径5mmをカットオフとした場合,感度65.7%,特異度72%,正診率69.4%と有意に(P=0.033)壁肥厚が高い悪性予測因子であった.3. WTとMNの組み合わせでの悪性率は,MN 5mm以上かつWTなし群23例中21.7%(5/23),MN 5mm以上かつWTあり群14例中100%(14/14),MN 5mm未満かつWTなし群36例中11%(4/36),MN 5mm未満かつWTあり群21例中52.3%(11/21)と,MNとWTの組み合わせで高い悪性診断能を得ることができる.MN 5mm未満かつWTあり群の21例中,MNを認めない(2mm以下)でWTのみ陽性の症例は8例ありこのうち5例(62.5%)は悪性でさらに60%(3/5例)は微小浸潤癌であった.新ガイドラインでは,壁肥厚のみで明かな結節を認めない場合は経過観察となってしまうため,WTのみでMNのない症例は浸潤癌ながら見落とされる危険性があり注意が必要である.【結語】壁肥厚は" worrisome features" よりさらに強い悪性予測因子である可能性がある.
索引用語 IPMN, 壁肥厚