セッション情報 パネルディスカッション7(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

IPMN新コンセンサス診療ガイドラインの検証

タイトル 内PD7-9:

Worrisome featuresを示さない分枝型IPMN症例のサーベイランスプロトコールは変更するべきか?

演者 羽廣 敦也(イムス札幌消化器中央総合病院・消化器病センター)
共同演者 丹野 誠志(イムス札幌消化器中央総合病院・消化器病センター), 林 明宏(イムス札幌消化器中央総合病院・消化器病センター)
抄録 【目的】2012年版IPMN診療ガイドラインでは,”high-risk stigmata”と”worrisome features”が提唱され,これらのみられない安定した分枝型IPMN(BD-IPMN)症例では嚢胞径に応じた検査間隔の延長を提示している.長期間にわたって安定している場合に経過観察をどうすべきかについては実臨床で重要な問題であるがいまだに明確ではない.本検討では,worrisome featuresを示さないBD-IPMNの検査間隔をどうすべきか検証することを目的とした.【対象と方法】1年以上の経過観察を行ったBD-IPMN 135例を対象とした.初診時に壁在結節を認めず,定期検査は6~12か月ごとに行った.定期検査中における,1)嚢胞径変化,壁在結節出現,切除例の病理所見,2)膵癌頻度と発生までの期間,3)膵癌発生例におけるBD-IPMN変化について検討した.【結果】1)観察期間中26例(19.2%)に嚢胞径増大を認め,15例は嚢胞径30mm以上を示した.壁在結節出現を6例(4.4%)に認めた.外科切除を13例(9.6%)に施行,病理所見はlow-grade dysplasia 12例,high-grade dysplasia 1例,浸潤癌0例であった.外科切除までの期間は平均91.5か月で,60か月以内5例(38.4%),120か月以内4例(30.8%),240か月以内4例(30.8%)であった.2)通常型膵癌発生は10例(7.4%),膵癌症例の内訳は男女比7:3,平均年齢72.8歳,膵癌診断までの期間は60か月以内4例(40%),120か月以内3例(30%),180か月以内3例(30%),平均84.7か月であり,長期間にわたって膵癌の発生を認めた.3)膵癌10例において,IPMNの乳頭側に膵癌が発生した2例(20%)に嚢胞径増大を認めたが,8例(80%)ではBD-IPMNの変化はみられなかった.【結論】経過観察中にworrisome featuresを示さないBD-IPMNでも,膵癌発生リスクの観点から検査間隔の延長は避けるべきと考えられた.経過中に嚢胞径増大を呈する場合には,乳頭側に膵癌が発生していないかも念頭に置いて,検査間隔を短縮したサーベイランスを行うことが必要と考えられた.
索引用語 分枝型IPMN, コンセンサス診療ガイドライン