セッション情報 パネルディスカッション7(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

IPMN新コンセンサス診療ガイドラインの検証

タイトル 消PD7-11:

IPMN自然経過からみた膵癌発生と膵癌死-新旧ガイドラインでの比較検討

演者 三島 沙織(国立国際医療研究センター・消化器科)
共同演者 川添 彬人(国立がん研究センター東病院・消化管内科), 永田 尚義(国立国際医療研究センター・消化器科)
抄録 【目的】IPMNの分類,切除適応因子の有無における膵癌発生,膵癌死のリスクを長期経過観察例から検証する.【方法】当院で2001年から2012年までにIPMNと診断し,定期的な画像経過観察が可能であった285人を解析対象とした.IPMNの診断はMDCTまたはMRCPで放射線専門医が読影し,主膵管との交通を認める5mm以上の嚢胞性病変かつ急性膵炎の既往のないものとした.膵癌発生,膵癌死をエンドポイントとし,生存時間解析を行った.初回診断時の画像所見から,新旧ガイドラインの記載に従って分類・切除適応因子を定義した.これら因子におけるイベント発生の違いをlog-rank検定を用いて解析し,年齢,性別を考慮したCox比例ハザードモデルによるハザード比を求めた.【結果】観察期間中央値39カ月で膵癌発生を12例(4.2%)に認めた.5年膵癌累積発生率は主膵管型45.5%,分枝型3.8%であった(p<0.01).一方,旧ガイドラインでは主膵管型44.4%,分枝型4.6%であった(p<0.01).ハサード比(HR)はそれぞれ13.6 (95%CI4.07‐45.5),9.9 (95%CI2.0‐43.2)であった.切除適応因子を有する群では5年膵癌累積発生率が33.3%に対して,有さない群では4.6%であった(p=0.01).旧ガイドラインでは,切除適応因子を有する群では9.2%に対し,有さない群では4.9%であった(p=0.41).HRはそれぞれ6.1 (95%CI1.3‐28.0),1.8 (95% CI0.5‐6.9)であった.生存観察期間中央値47.5カ月中に21例が死亡し,膵癌死は7例であった.5年膵癌累積死亡率は主膵管型18.5%,分枝型2.1%であった(p<0.01).一方,旧ガイドラインでは主膵管型20.0%,分枝型2.4%であった(p=0.02).HRはそれぞれ20.1 (95%CI4.4‐92.7),10.5 (95%CI1.2‐90.5)であった.【結論】分枝型IPMNの5年膵癌発生率と死亡率は約4%,2%に対し, 主膵管型では約50%,20%であった.新ガイドラインの分類及び切除適応因子は旧ガイドラインと比較し膵癌発生と膵癌死のリスクの指標として有用であった.
索引用語 IPMN, 新旧ガイドライン