セッション情報 パネルディスカッション7(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

IPMN新コンセンサス診療ガイドラインの検証

タイトル 外PD7-12:

分子生物学的解析によるIPMN併存膵癌ハイリスク群の同定

演者 大塚 隆生(九州大・臨床・腫瘍外科)
共同演者 井手野 昇(九州大・臨床・腫瘍外科), 田中 雅夫(九州大・臨床・腫瘍外科)
抄録 IPMN併存膵癌の認知度も高くなり,IPMNを危険因子とした膵癌早期診断のための取組みが各施設で行われるようになってきた.一方,IPMN併存膵癌の早期診断のための経過観察間隔や診断法は施設間で異なり,2012年診療ガイドラインでも明確な指針は示されていない.我々は悪性IPMN切除後には3~4ヶ月ごとにCTあるいはMRIによる経過観察を,それ以外の切除・非切除を含むIPMNには6ヶ月ごとにCTとMRIを交互に行う経過観察を行ってきた(Am J Surg 2012).しかし多くの併存膵癌は進行癌で診断され,切除不能多発肝転移で診断された患者も経験した.従ってIPMNの中でも併存膵癌を合併しやすい高危険群を同定できれば,stage 0~I膵癌の診断能が高いERCPやEUSを組み合わせた重点的な経過観察を行うことで,多くの併存膵癌を早期に診断できる可能性がある(JHBPS 2013).IPMN併存膵癌20例(26病変)を含む179例のIPMN切除標本を用いて,MUC染色によるsubtype分類とGNAS変異に注目した分子生物学的解析を行ったところ,併存膵癌の90%はMUC2陰性の胃型IPMNに合併していた.また6例でIPMN(胃型5例,腸型1例)と併存膵癌のGNAS変異を調べたところ,併存膵癌6病変と胃型IPMN5病変にGNAS変異は認めず,腸型IPMNの1例のみにGNAS変異を認めた.また併存膵癌は分枝型IPMNに合併することが圧倒的に多いが,我々は最近3例の主膵管型IPMN併存膵癌を経験しており,この3例の主膵管型IPMNはいずれもMUC2陰性・胃型で,GNAS変異を認めなかった.すなわちMUC2陰性・胃型でGNAS変異を認めないIPMNが分枝型,主膵管型を問わず併存膵癌合併の高危険群と考えられた(Ann Surg 2013).切除例ではMUC染色とGNAS変異の解析は可能であるが,非切除経過観察例での解析をどのように行っていくかが今後の課題である.
索引用語 IPMN, 併存膵癌