セッション情報 パネルディスカッション8(肝臓学会・消化器病学会合同)

高齢者・肝機能低下例に対するC型肝炎治療の適応と限界

タイトル 消PD8-2:

高齢・非線維化進展C型慢性肝疾患の遺伝子多型測定の有用性

演者 是永 匡紹(国立国際医療研究センター・肝炎・免疫研究センター)
共同演者 西田 奈央(国立国際医療研究センター・肝炎・免疫研究センター), 溝上 雅史(国立国際医療研究センター・肝炎・免疫研究センター)
抄録 【目的】C型慢性肝疾患に対する経口抗ウイルス剤開発により,IFN不応者も高率にウイルス排除が可能になる一方で,治療対象の多くを占める高齢者には,病態が進行しない症例も存在する.近年,肝線維化・肝発がんに関与する遺伝子多型(SNPs)も報告され,SNPsを組み合わせることで経口抗ウイルス剤治療適応者を絞り込めるか否かを明らかにするため以下の検討を行った.【方法】2010.01~2013.1の期間に,SNPs測定に同意が得られ解析可能であったC型慢性肝疾患428例中,70歳以上非肝硬変(nonLC)62例と肝硬変(LC)and/or肝癌(HCC)90例に対してrs8099917(IFN感受性),rs738409(脂肪化/線維化),rs2596542,rs1012068(発癌),rs4800(酸化ストレス)をinvader法にて測定し,またミトコンドリアのハプログループ分類に用いるSNPsも解析した.更に,nonLCではIFN治療,飲酒歴を除外した症例を抽出し,検討1:女性nonLC群46例と女性肝硬変・肝癌群49例,検討2; 75歳以上nonLC群34例と75歳未満LC/HCC 群48例を比較検討した.LC/HCC群は発症時のdataと年齢を,LCの診断には肝生検とVTTQで計測されるVs値(1.8m/s以上),nonLC群では(1.4m/s未満)を基準とした.【成績】多変量解析では有意なSNPsや組み合わせを確認できなかったが,女性nonLC群ではrs4800 non major(22%vs40%:p<0.05)と有意にrisk alleyの頻度が低く,75歳以上nonLC群でも同様にrs738409 non minor(24%vs51%:p=0.012), rs4800 non major(26%vs64%:p=0.0009)が確認された.一方rs2596542, rs1012068に相関を認めなかった.女性間の比較では,ミトコンドリアハプログループG2が発癌症例にのみに存在し(P=0.048),長寿に多いとされるD4aを分類するMt10410Cが75歳以上nonLC群にのみ(P=0.018)認められた.【結論】環境因子を排除しSNPsを多数検討しても,非発癌症例を正確に抽出する事は困難であるが,nonLC症例であれば,rs738409,rs4800,ミトコンドリアハプログループG2以外(特にD4a)を検査することで,病態進展例抽出できる可能性がある.
索引用語 SNPs, C型慢性肝炎