セッション情報 パネルディスカッション8(肝臓学会・消化器病学会合同)

高齢者・肝機能低下例に対するC型肝炎治療の適応と限界

タイトル 肝PD8-3:

肝硬度測定を用いた高齢C型肝炎の検討

演者 井上 泰輔(山梨大・1内科)
共同演者 辰巳 明久(山梨大・1内科), 榎本 信幸(山梨大・1内科)
抄録 【目的】高齢と線維化は肝発癌の危険因子でありIFN治療適応に重視される.そこで年齢と肝硬度の肝癌とIFN適応判断へ与える影響を検討した.【方法】1)2010年2月よりFibroScanを行ったC型肝炎721例(HCC無554,有167,平均62.7歳)の担癌状態と肝硬度を年齢別にROC解析で評価した.低肝硬度肝癌例では他の発癌リスク(DM,HBV既往等)を検討した.2) IFN検討時遺伝子検査と肝硬度を測定した337例(平均59.3歳)で年齢別判断を解析した.高齢低硬度例は低発癌リスクと考え不要と判断した.【成績】1)平均肝硬度は非HCC10.8kPa,HCC全例26.8, 64歳以下27.1, 65~69歳24.0, 70~74歳29.1, 75歳以上28.1であった.全例でHCC有無を判別するcut off値は12.0kPa,AUC0.845であった.65歳以上,70歳以上,75歳以上でのcut off値は12.0,12.0,11.2であった.HCC中12.0kPa未満は64歳以下6/35(17.1%),65歳以上24/132(18.2%)であった.低肝硬度HCCで他の発癌リスクを有する例は65歳以上22/24(91.7%)で64歳以下3/6(50%)より有意に高率であった.2) 64歳以下220例,65~69歳65例,70歳以上52例中実際にIFN治療を行った症例の割合(%)はそれぞれ(1型34.0,23.4,10.8)(2型55.9,53.3,30.8)であった.不要判断例は(1型0,14.9,51.4)(2型0,20,46.2)であり1,2型を合わせると65歳以上の31.3%,70歳以上の50% であった.不要例を含む68歳以上で治療群と不要群で平均肝硬度は12.1vs6.6と有意差を認めた.68歳以上でISDR0,1と2以上で治療率(%)は14.3vs44.4,不要35.7vs11.1であり,IL28Bmajorとminorで治療23.8vs8.3,不要35.7vs33.3であった.現在までに不要判断例での発癌は認めていない.【結論】HCC例は年齢差なく高肝硬度であり,少数の高齢低肝硬度HCCでは他のリスクを高率に認めた.そのため高齢高肝硬度例では早期の抗ウイルス治療が望ましいが,高齢低肝硬度例へのIFN治療は不要と判断できる可能性がある.
索引用語 高齢, 肝硬度