セッション情報 パネルディスカッション8(肝臓学会・消化器病学会合同)

高齢者・肝機能低下例に対するC型肝炎治療の適応と限界

タイトル 肝PD8-5:

高齢者C型肝炎におけるウイルス排除を目指した治療の有効性と安全性

演者 柿沼 晴(東京医歯大大学院・肝臓病態制御学DELIMITER東京医歯大・消化器内科)
共同演者 朝比奈 靖浩(東京医歯大大学院・肝臓病態制御学DELIMITER東京医歯大・消化器内科), 渡辺 守(東京医歯大・消化器内科)
抄録 【目的】C型肝炎における肝線維化進展の速度や発癌率は,高齢者では若年者に比し高い.発癌抑止効果を得るためには高齢者においてもウイルス排除を達成することが重要と考えられるが,テラプレビル3剤併用療法は困難な点もある.そこで高齢者におけるウイルス排除を目指したPegIFN/Ribavirin(PEG/RBV)併用療法の有効性と安全性につき検討をおこなった.
【方法】当院および関連施設でPEG/RBV併用療法を施行したC型慢性肝炎641例(Genotype1(G1)/Genotype2(G2)=434/207を対象に宿主遺伝子(IL28B; rs8099917,ITPA; rs6051702, rs1127354)のSNP解析を行い,ウイルス遺伝子情報とともに治療効果および副作用との関連性を解析した.
【結果】高齢者ではG1(p=0.049),F3以上(p=0.047),血小板低値例(p=0.001),γGTP低値例(p=0.009)が有意に多かった.G1に対するPEG/RBV48-72週療法におけるSVR(ITT解析)は65歳未満 vs. 65歳以上=49%(162/325) vs. 33%(37/112, p=0.009),G2に対するPEG/RBV24-48週療法では79%(132/168) vs. 59%(24/40, p=0.022)といずれも高齢者で有意に低下した.
ただし,G2では70歳以上の高齢者でも62%と高いSVR率が得られ,IL28B non-major例でも有意に良好なSVRが得られた(G1 vs. G2=9% vs. 63%, p=0.005).高齢者あるいはIL28B non-major群では,ITPA non-major症例でSVR率が高い傾向を認めた.副作用中止率は高齢者でも有意差を認めず,血球減少は高齢者でも薬剤調節により治療完遂可能であった.
【結語】高齢者ではG1,線維化進展例など難治要因が集積しており,G1では非高齢者に比べて有意に治療効果は低下した.しかし70歳以上の高齢者でもPEG/RBV併用療法の副作用制御は可能で,IFN高感受性の症例を対象に積極的にPEG/RBV導入を検討することが望ましい.
索引用語 IL28B, ITPA