セッション情報 パネルディスカッション8(肝臓学会・消化器病学会合同)

高齢者・肝機能低下例に対するC型肝炎治療の適応と限界

タイトル 肝PD8-10:

高齢者C型慢性肝炎の発癌リスク因子とインタフェロン治療による発がん抑止効果

演者 鈴木 祥子(武蔵野赤十字病院・消化器科)
共同演者 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院・消化器科), 泉 並木(武蔵野赤十字病院・消化器科)
抄録 【目的】Telaprevir併用療法が困難な高齢者においては,発癌リスクを抑止するための治療が必要である.本研究では高齢者に対するinterferon(IFN)治療の発癌抑止効果を検討した.【方法】65歳以上のC型慢性肝炎に対して従来型IFN単独療法・PR併用療法を施行し非著効であった301例,および1年以上のPeg-IFN長期療法を施行した65例について,治療による発癌抑止効果を検討した.【成績】65歳以上の3/5/7年累積発癌率は4%/14%/25%と高率であった.抗ウイルス治療が非著効でも従来型IFN単独治療/PR併用療法により,治療開始前に>ALT 40 IU/Lの症例のうち39%/52%でALTが正常化し,治療開始前にAFP>10ng/ml症例のうち45%/51%でAFPが正常化した.治療終了後2/3/4/5年におけるALT正常値維持率は81%/76%/75%/74%,AFP正常値維持率は94%/93%/86%/87%であった.抗ウイルス治療が非著効でも,治療終了後24週時点のAFP<10ng/ml(HR 0.44, 95%CI 0.22-0.88, p=0.021),ALT <40IU/L(HR 0.41, 95%CI 0.21-0.83, p=0.012)で発癌リスクが有意に低下した.多変量解析では,AFPとALTは独立した発癌関連因子であった.Peg-IFN長期療法の対象者の3/5/7年累積発癌率は2%/3%/13%であった.66%の症例が治療前>ALT 40 IU/L,43%がAFP>10ng/mlであったが,Peg-IFN長期投与によりALT正常化が51%,AFP正常化が36%で得られた.治療中のALT正常化例で発癌リスクが有意に低下した(HR 0.26, 95%CI 0.07-0.97, p=0.044).【結論】Telaprevir併用療法が困難な高齢者でも,抗ウイルス治療によりALT,AFPを正常化すれば発癌リスクは減少する.
索引用語 C型慢性肝炎, 治療困難例