セッション情報 パネルディスカッション9(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会合同)

Barrett食道腺癌の診断と治療

タイトル 消PD9-2:

食道腺がんにおけるmiR-221/222の発現動態と抗マイクロRNA治療標的としての有用性

演者 松崎 潤太郎(慶應義塾大病院・消化器内科)
共同演者 鈴木 秀和(慶應義塾大病院・消化器内科), 日比 紀文(慶應義塾大病院・消化器内科)
抄録 【目的】悪性腫瘍の形成に21-25塩基程度の小さなnon-coding RNAであるmicroRNAの発現変化が関与することが知られている.miR-221/222は大腸がん,膵管がんなどで腫瘍促進的に作用するmicroRNAとしてよく研究されているが,バレット食道から食道腺がんへの発がん過程におけるmiR-221/222の動態は不明である.我々はヒト食道腺がんの切除検体を用いて食道腺がんにおけるmiR-221/222の発現変化を検討した.またmiR-221/222の標的遺伝子であるp27Kip1と,腸上皮化生誘導に必須の転写因子CDX2の発現を評価した.更にanti-miR-221/222の抗腫瘍効果をin vitroで検討した.
【方法】外科的切除された食道腺がんの切除検体を用いた.腫瘍部とバレット食道部の粘膜をパラフィン固定標本より剥離しRNAを抽出した後,miR-221/222を定量した.また同標本にてp27Kip1とCDX2の免疫染色を行った.さらにヒト食道腺がん細胞株OE33を用いて,anti-miR-221/222を作用させた際のp27Kip1とCDX2蛋白発現量および細胞増殖能の変化を評価した.
【成績】11例の患者検体(pT1b-SM2: 1例,pT1b-SM3: 3例,pT2-MP: 2例,pT3-Ad: 5例)を用いた.miR-221/222の発現量はバレット食道部に比して食道腺がん部で有意に高く,また食道腺がん部の発現量は深達度の進行に伴って増加した.p27Kip1とCDX2はdysplasiaを伴わないバレット食道では共発現を認めたが,low-grade dysplasia, high-grade dysplasia, adenocarcinomaと進行するに従って共に染色性が低下した.OE33にanti-miR-221/222を作用させると,p27Kip1とCDX2が増加し,増殖能が低下した.さらに免疫不全マウス皮下に移植したOE33腫瘍塊に対し,anti-miR-221/222を7日間連続投与すると,コントロールと比較して腫瘍径が抑制された.
【結論】miR-221/222はp27Kip1の発現抑制を介してバレット食道から食道腺がんへの進展を促進する機能を有し,食道腺がんの新たな分子標的になりうると考えられた.
索引用語 食道腺がん, マイクロRNA