セッション情報 パネルディスカッション9(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会合同)

Barrett食道腺癌の診断と治療

タイトル 消PD9-3:

新規バイオマーカー探索を目指した食道胃接合部癌の分子病理学的異常の検討

演者 伊藤 美樹(札幌医大・1内科)
共同演者 能正 勝彦(札幌医大・1内科), 篠村 恭久(札幌医大・1内科)
抄録 【目的】食道胃接合部癌は本邦でも食生活の欧米化やH.pylori感染率の低下,内視鏡診断学の向上により症例数が増加している. また新規の分子標的薬の開発に伴い,進行再発胃癌および食道胃接合部癌患者に対する化学療法は多岐にわたり,治療成績の向上がみられている. よって個別化治療の観点から食道胃接合部癌の分子診断・治療のバイオマーカーを同定することは,非常に重要であるが,それらの分子異常はほとんど解明されていないのが現状である. よって今回,我々は新規バイオマーカー探索を目指し, 網羅的な遺伝子解析を行った.【方法】対象は内視鏡的粘膜剥離術または外科的切除を施行された食道胃接合部癌52例 [年齢中央値71歳(39歳-85歳),男:女=42:10.内視鏡治療:外科治療=46:6.Stage0/I/II/III/IVa/IVb=27/19/1/0/5/0]でFFPEからDNAを抽出. KRAS,BRAF,PIK3CA遺伝子変異をパイロシークエンス法で解析. またゲノムワイドDNA低メチル化の指標であるLINE-1, またIGF2 DMR0やMLH1のメチル化レベルとMSIについても検討した. 【結果】食道胃接合部癌ではBRAF遺伝子変異は認めず,KRAS変異は3例,MSIは1例で認めた.PIK3CA変異は5例で認めたが, それらは全例バレット腺癌であった.LINE-1とIGF2 DMR0のメチル化レベル,またMLH1メチル化の頻度をバレット腺癌と噴門部胃癌で比較検討したところ, LINE-1でのみ有意差が認められ, バレット腺癌でそのメチル化レベルが低い傾向がみられた.【考察】バレット腺癌と噴門部胃癌でそれぞれ特異的な分子異常が解明されることにより,診断や治療のバイオマーカーとして臨床応用できる可能性が考えられる.我々はアレイシステムを用いてそれらのmicroRNA 発現についても解析を進めており,その結果も合わせて報告する.
索引用語 食道胃接合部癌, バイオマーカー