セッション情報 パネルディスカッション9(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会合同)

Barrett食道腺癌の診断と治療

タイトル 内PD9-4:

本邦におけるLSBE症例の臨床的特徴と長期経過観察例の検討

演者 石村 典久(島根大・2内科)
共同演者 結城 崇史(島根大附属病院・光学医療診療部), 木下 芳一(島根大・2内科)
抄録 【目的】本邦ではLSBEは稀であり,SSBEとの病態の相違や長期経過観察例での発癌リスクについて十分に把握できていない.そこで,当院でのBarrett食道症例の解析からLSBE症例の臨床的特徴および長期経過の検討を行った.また,日本消化器内視鏡学会の主導で進行中の「バレット食道の発癌リスクを明らかとするための多施設参加の前向きコホート研究」の登録状況(平成25年3月18日現在;167例登録)についても報告する.
【方法】検討1:当院での上部消化管内視鏡検査施行例(6757例)についてLSBEおよびSSBEの有病率を調査し,臨床的背景の検討からLSBE及びその合併症について考察した.検討2:初回診断時に腺癌の合併を認めず,1年以上(1年~8年3ヵ月)内視鏡的経過観察を行ったLSBE8例について内視鏡所見および背景因子を評価し,dysplasia・腺癌合併のリスク因子について検討した,対照群として舌状に3cm以上の長さのSSBE15例についても同様に検討した.
【成績】結果1:内視鏡的LSBE,SSBEの頻度は各々0.38%(26例),37.4%(2527例)であった. LSBEはSSBEに比して有意に平均年齢が高く,重症型GERD症例が多い,腺癌合併が多いなどの特徴が見られた.また,脊柱後彎症はLSBEの半数に認めた.結果2:LSBEに腺癌を合併した例は初回観察時が6例(25%)と最も多かったが,経過観察中に腺癌1例,low grade dysplasia1例の合併を認めた.一方,SSBE(M-extent>3cm)においては4例(12%)に初回観察時に腺癌を認め,経過観察中にhigh grade dysplasia1例,low grade dysplasia1例を認めた.surveillanceにはNBI拡大観察及びクリスタルバイオレットを用いた狙撃生検が有用であった.
【結語】本邦のLSBEの特徴として脊柱後彎との関連が示唆された.LSBEの腺癌の合併は初回観察時に認められることが多いが,発癌ハイリスク群として厳重なsurveillanceが必要である.現在進行中の多施設による十分な症例数の解析から,本邦独自のLSBEのリスク因子の同定および適切なsurveillance法の確立が望まれる.
索引用語 Barrett食道, Barrett食道腺癌