抄録 |
【背景・目的】欧米と比較し本邦でのバレット食道癌は稀とされてきたが,近年のバレット食道の頻度の増加と共に発生数の増加が危惧されている.今回我々は自験例を基にバレット食道及びバレット食道癌の推移と臨床的特徴を検討した.【対象・方法】2007.1-2012.12までに当院で上部消化管内視鏡検査を施行したのべ31586人を対象にバレット食道,バレット食道癌患者を抽出し1)新規に診断されたLSBE患者数の割合を内視鏡検査数を基準に年次別に検討,バレット食道癌においては食道癌全体に占める割合を検討した.2)LSBEの臨床,内視鏡的特徴及びバレット食道癌の臨床的特徴につき検討した.【結果】1)新規LSBEを35例に認め,年次別頻度は2007年より2012年の順に0.04%,0.06%,0.08%,0.09%,0.22%,0.14%と推移していた.SSBEの割合は6.1%,9.6%,9.0%,9.5%,9.5%,11.2%であった.バレット食道癌は23例あり食道癌に占める割合は1.8%,0.9%,2.9%,2.4%,3.1%,5.0%であった.2)LSBE(35例)は平均年齢70.3歳,男女比28:7,逆流性食道炎(M:21,A:4,B:3,C:4,D:3),胃粘膜萎縮なし26例,食道癌合併9例(27%)であった.バレット食道癌(23例)は平均年齢69.6歳,男女比21:2,SSBE:11,LSBE:12,肉眼型(IIa:5,IIb:1,IIc:4,IIa+IIc:3,III+IIc:1,2型:3,3型:6),深達度(M:5,SM:9,MP以深:9),病理(高分化型腺癌9,中分化型8,低分化型6),治療(手術19,化学療法1,無治療3),予後(死亡5,生存14,不明4)であった.【結論】LSBEの頻度,バレット食道癌の全食道癌に占める割合は共に漸増していた.バレット食道癌の背景食道粘膜はSSBEとLSBEで二分されていたが,SSBEとLSBEの頻度を考慮するとLSBEは高危険群として慎重な経過観察が必要と考えられた. |