セッション情報 パネルディスカッション10(肝臓学会・消化器病学会合同)

肝癌サーベイランスにおけるバイオマーカーの再評価

タイトル 肝PD10-1:

高感度AFP-L3分画を用いたサーベイランスによる早期段階での肝細胞癌の診断

演者 伊藤 隆徳(大垣市民病院・消化器内科)
共同演者 熊田 卓(大垣市民病院・消化器内科), 豊田 秀徳(大垣市民病院・消化器内科)
抄録 【目的】lens culinaris agglutinin A-reactiveα-fetoprotein(AFP-L3分画)の測定がAFP低濃度領域でも可能となりその有用性が期待されている.今回われわれは肝細胞癌(HCC)高危険群で経過観察中の発癌例と非発癌例で保存血清を用いて腫瘍マーカーを遡及的に測定しその有用性について検討した.【方法】2000年1月から2009年12月の間に経験したB型肝炎ウイルス(HBV)キャリアもしくはC型肝炎ウイルス(HCV)キャリア2830例中,3年以上経過観察されかつ血清保存された1214例で経過観察中に114例の肝細胞癌(HCC)が発生した.この114例と非発生例の1100例で年齢,性,成因(HBVもしくはHCV),Child-Pugh分類,血小板,ALTの6因子をpropensity score法でマッチさせて発癌例104例,非発癌例104例を抽出した.これらの症例のでHCC診断時(非発癌例では最終血清保存日),1年前,2年前,3年前の保存血清で高感度(AFP-L3分画)を測定した.【成績】診断時のHCCの結節径は1.9cm(hinge:1.5-2.3cm),単発/多発は72例/32例,StageI/II/IIIは49例/41例/14例であった.カットオフ値を7%とすると診断1年前の高感度AFP-L3分画の感度は34.3%,特異度74.7%であった.USで所見を認め診断に至った86例中,26.9%で1年前に高感度AFP-L3分画は7%以上となっていた.診断1年前に高感度AFP-L3分画が7%以上となった症例(n=34)は7%未満の症例(n=65)に比し有意に予後が不良であった(p=0.0392).高感度AFP-L3分画は1年前に画像診断等で所見を認めない症例でも34.3%でも陽性で,これらの症例の予後は不良であった.【結論】診断1年前の時点で高感度AFP-L3分画の陽性症例にMRI等を含めた画像診断を行えば,より早期の発見が可能となり予後の改善が期待される可能性が示された.
索引用語 AFP-L3, HCC