セッション情報 パネルディスカッション10(肝臓学会・消化器病学会合同)

肝癌サーベイランスにおけるバイオマーカーの再評価

タイトル 肝PD10-2:

肝細胞癌診断のバイオマーカーとしての血中フコシル化ハプトグロビン測定の意義

演者 鎌田 佳宏(大阪大大学院・機能診断科学DELIMITER大阪大・消化器内科)
共同演者 竹原 徹郎(大阪大・消化器内科), 三善 英知(大阪大大学院・機能診断科学)
抄録 【目的】糖鎖は癌化に伴ってその構造が大きく変わるため,臨床的に腫瘍マーカーとして用いられるものが多い.フコースによる糖鎖修飾をフコシル化とよび,フコシル化AFP(AFP-L3)は,PIVKA-IIと並んで肝癌に特異性が高い腫瘍マーカーとして頻用されている.フコシル化ハプトグロビン(Fuc-Hpt)は,グライコミクスの手法を用いて我々が同定した新しい腫瘍マーカーの候補である.我々はこれまでに肝疾患進展におけるFuc-Hptの意義について報告してきた(第39回肝臓学会西部会,第48回肝臓学会総会).今回慢性肝疾患,肝臓癌のfollow-up症例を中心にバイオマーカーとしてのFuc-Hptの有用性について検討を行った.【対象と方法】1996年~2010年に当院関連病院で入院・通院加療した患者(原発性肝癌92例,肝硬変80例,慢性肝炎145例)および健常対照者300例を対象とした.16例では肝発癌前後の血清も採取した.保存血清を用い,我々が開発したFuc-Hpt ELISAキットを用いて測定した.このキットは,ヒトハプトグロビンに対する抗体のFab部分を固相化し,フコースを認識するレクチンであるAALとのsandwich assayにより測定している.対象者のうち364例では血中総ハプトグロビン値も測定した.【成績】血中Fuc-Hpt値と総ハプトグロビン値は相関がなかった(p=0.84).Fuc-Hpt値は健常者で低く,肝疾患進展に伴い有意に上昇していった(健常者513±566,慢性肝炎1314±1574,肝硬変2459±3463,肝癌3260±3511 U/mL).経過観察例では肝発癌後Fuc-Hpt値は有意に上昇した(967±1795 vs 2687±1953 U/mL,p<0.005).肝発癌前後の各腫瘍マーカーのROC曲線を用いた検討でFuc-Hpt(AUROC: 0.84)はAFP(0.60),AFP-L3(0.55),PIVKA-II(0.70)と比べAUROCが高値であった.【結論】Fuc-Hptは肝疾患進展とともに上昇し,肝癌サーベイランスにおける新たなバイオマーカーとなりうる.
索引用語 フコシル化ハプトグロビン, バイオマーカー