抄録 |
【目的】肝細胞癌(HCC) は根治後も高頻度に肝内再発を来し,特に早期再発例は極めて予後不良であり,臨床上早期再発を予測する有用なマーカーの構築が望まれる.microRNA(miRNA)の発現異常は,癌の進展,転移にも大きく関わり,近年細胞外に分泌されるmiRNAが,血液検査で癌の診断,治療に関するバイオマーカーとして注目され始めている.今回治療前の血清より肝癌早期再発に関するmiRNAの同定を行った.【方法】対象は,HCCにて肝切除施行された45例(早期再発 (ER)-肝切除後6ヶ月以内に再発-19例,5年以上無再発生存 (NR)-26例),HCCを伴わない慢性肝炎(H)10例,健常人(C)5例,計60例.1) 5例のERと5例のNR,2例の健常人の血清を用いて,miRNA-microarrayによる網羅的解析を行い,早期再発に関与するmiRNAの同定を行った.2)同定されたmiRNAを定量RT-PCRにより上記60例で検討した.【結果】1) array解析より,ER-NR両群間で発現差2倍以上ある18のmiRNAを同定した.2) 18のmiRNAの60例における定量PCRで特に早期再発で高発現している5つのmiRNA; miR-135a, miR-658, miR-665, miR-1246, miR-1915を抽出した.miRNAそれぞれの発現比(ER/NR,ER/H,ER/C)は,miR-135a(3.2, 2.3, 2.7), miR-658(4.2,3.5,2.9), miR-665(3.4,2.7,2.3), miR-1246(2.9,3.4,3.8), miR-1915(4.9,3.2,5.7)であり,さらにこの5つのmiRNAを組み合わせてリスクスコア化することにより,HCCの早期再発の感度は71.2%,特異度は82.4%であった.なおこのスコアはHCCの分化度,予後とも相関を示した.【考案および結論】今回同定された5つのmiRNAが肝癌早期再発診断のバイオマーカーになりうる可能性が示唆された.miR-135aは門脈腫瘍栓を伴うHCCの組織で高発現し(J.Hepatol2012),miR-1246は食道癌の予後に相関する血清バイオマーカーである事(BJC 2013)が報告されており,今後多数例での検証が望まれる. |