セッション情報 パネルディスカッション10(肝臓学会・消化器病学会合同)

肝癌サーベイランスにおけるバイオマーカーの再評価

タイトル 肝PD10-6:

予後予測マーカーとしての腫瘍マーカー倍加時間の有用性の検討

演者 松本 伸行(聖マリアンナ医大・消化器・肝臓内科)
共同演者 池田 裕喜(聖マリアンナ医大・消化器・肝臓内科), 伊東 文生(聖マリアンナ医大・消化器・肝臓内科)
抄録 【目的】肝細胞癌の診断,治療においてAFP, DCPなどの腫瘍マーカー(Tumor Marker : TM)は広く用いられている.一方,TMの絶対値よりもその動態は腫瘍の生物学的特性をより強く反映していると考えられる.そこで我々は肝細胞癌の初回治療時におけるTM倍加時間(TM Doubling Time: TM-DT)を測定することで予後を予測できるかどうかを検討した.【方法】2008年1月から2011年12月までの間に当科にて入院加療を行った初発肝細胞癌患者151症例を対象とした.対象は平均年齢70歳,男性100例,女性51例,HCC stage I : 34例,II : 60例,III : 35例,IVa : 14例,IVb : 8例 であった.このうち入院直前と入院時の2回の腫瘍マーカー測定がなされたAFP131例,DCP116例の,DT-AFP, DT-DCPを算出し予後と比較した.DTはDT=d x log2 /log(b/a) (d:測定間隔日数,a:入院直前検査値,b:入院時検査値)により計算した.【成績】入院前と比して検査値が増加していた症例はAFP83例(AFP-DT: 10.6~4300.9日,中央値:169.2日),DCP64例(CDP-DT: 8.3~781.4日,中央値:56.7日)であった.ここからCut off値をAFP-DT 170日,DCP-DT 60日として検討を行った.Cut off値以下の症例をRapid群とし,Cut off値以上の症例に,入院前と入院時で検査値が同じであった症例と,減少した症例(AFP:48例,DCP:52例)を加え,Slow/NC群として,生存曲線をKaplan-Meier法にて検討した.DT-AFP群はRapid群とSlow/NC群との間に有意差を認めなかったが,DT-DCPにおいてRapid群はSlow/NC群と比して有意に予後不良であった.(p=0.029)【結論】DT-DCPは肝細胞癌の予後予測マーカーとなる可能性がある.
索引用語 腫瘍マーカー, 倍加時間