セッション情報 パネルディスカッション10(肝臓学会・消化器病学会合同)

肝癌サーベイランスにおけるバイオマーカーの再評価

タイトル 肝PD10-7:

新たなPIVKA-II分画(NX-PVKA)の肝癌患者予後予測における臨床的有用性

演者 竹治 智(愛媛大大学院・消化器・内分泌・代謝内科学)
共同演者 廣岡 昌史(愛媛大大学院・消化器・内分泌・代謝内科学), 日浅 陽一(愛媛大大学院・消化器・内分泌・代謝内科学)
抄録 【目的】演者らは既に新たなPIVKA-II分画であるNX-PVKAが,肝細胞癌(HCC)の予後と最も関連する腫瘍マーカーとなりうることを同定した.さらに,NX-PVKAを用いてHCC患者の全生存期間(overall survival)を算出するROM(Risk of Mortality)スコアを作成した.そこで,NX-PVKAがHCC患者の予後と関連する原因を詳細に検討するとともに,ROMスコアの臨床的意義について評価する事を目的とした.【方法】対象はワーファリンを内服していない初発HCC患者197例,及び,非HCC(肝硬変)患者106例.HCC治療前の保存血清より,PIVKA-II,NX-PVKA,NX-PVKA-R(PIVKA-II/NX-PVKA), A FP, AFP-L3を測定し,各々の測定値と患者背景因子,臨床因子,腫瘍因子との関連を調べた.またROMスコアと同じく予後予測の指標であるTOKYO,CLIP等のスコアと比較し臨床的有用性を検証した.【成績】腫瘍マーカーではNX-PVKAが最も全生存期間に関連した.NX-PVKAはHCCの最大腫瘍径,腫瘍個数,門脈浸潤の有無と有意に関連した.またこれらの腫瘍因子を除き,HCC患者の全生存期間に有意に関連する臨床因子として性,アルブミン,γ-GTP,LAP,CRP,ヒアルロン酸,及び,NX-PVKAが抽出された.これらを用いて導出されたROMスコアの全生存期間との相関係数はr=0.686であり,TOKYO(r=0.530),CLIP(r=0.537)の各スコアに比して高く,最も強く予後を反映した.非HCC患者血清を用いた検討では,血清NX-PVKA,PIVKA-II,NX-PVKA-Rは,それぞれ,Child-Pugh分類と有意に関連(p=0.0012, 0.0365,0.0032)し,特に,血清NX-PVKA値はChild-Pugh分類A,B,Cの各群間で有意差がみられた.一方,AFP, AFP-L3はChild-Pugh分類との関連はみられなかった(p=0.2234,0.1517).【結論】NX-PVKAを用いたROMスコアは,HCC患者の全生存期間の推定に有用である.NX-PVKAは,腫瘍因子のみならず,背景肝の肝予備能を強く反映することから,全生存期間のより正確な推定に寄与しうる腫瘍マーカーであると考えられた.
索引用語 NX-PVKA, 全生存期間