セッション情報 パネルディスカッション10(肝臓学会・消化器病学会合同)

肝癌サーベイランスにおけるバイオマーカーの再評価

タイトル 肝PD10-8:

肝細胞癌における血清Dickkopf-1の新規バイオマーカーとしての可能性

演者 砂子阪 肇(金沢大・恒常性制御学)
共同演者 山下 太郎(金沢大・恒常性制御学), 金子 周一(金沢大・恒常性制御学)
抄録 【目的】最近癌幹細胞をはじめとする癌の幹細胞性と悪性度の関係が注目されており,我々はこれまで肝幹細胞マーカーであるEpCAMとAFPを用いた新たなHCC分類を提唱してきた.今回我々はEpCAMと正相関する遺伝子Dickkopf-1 (DKK1) の血清濃度を測定し,HCC診断治療におけるDKK1のバイオマーカーとしての有用性について検討した.【方法】2005年1月から2012年9月までの期間,当科で加療した初発HCC 357例を対象とし,患者血清を用い,Human DKK-1 ELISA Kit(Uscn Life Science Inc.)にて血清DKK-1を測定.既知腫瘍マーカーとの比較・相関および予後を検討した.【成績】対象例の背景肝疾患はHBV/HCV/HBV+HCV/Alcohol/otherが57/202/3/42/53例,背景肝予備能はChild Pugh A/B/C/判定不能が257/86/12/2例,腫瘍因子はBCLC Stage A/B/C/D が161/111/71/14例であった.全症例の血清DKK-1中央値は209.3 pg/ml(範囲:43.0 - 5556.3pg/ml)であった.背景肝疾患別ではHBV/HCV/Alcohol/other群で中央値248.3/182.1/229.3/274.9 pg/mlであり, HCV関連HCC群で低値になる傾向があったが,非B非C関連HCC群と,HBV関連HCC群とに差は認めなかった.既知の腫瘍マーカーとの検討では,血清DKK-1は血清AFPと相関を認めず,血清PIVKA-IIと弱い相関を認めたが,ほぼ独立した因子であった.肝癌症例でのDKK-1陽性率は54.4%で,AFP/PIVKA-II/DKK-1の組み合わせで84.8%のHCC症例で腫瘍マーカー陽性となった.特にAFP/PIVKA-II陰性HCC症例のDKK-1陽性率は58.1%で,HCC診断において既知のマーカーと相補的なマーカーになり得る可能性が考えられた.またDKK-1は脈管侵襲を有する群では有意に高値で(p<0.001),DKK-1高値群と低値群に群別したところ,2群は層別化され,DKK-1高値群は予後不良である傾向を認めた.【結語】血清DKK-1は HCCの診断に有用であり,既知のマーカーと組み合わせることで診断能の向上,およびHCCの予後予測に有用なバイオマーカーとなる可能性が示唆された.
索引用語 肝細胞癌, Dickkopf-1