セッション情報 パネルディスカッション10(肝臓学会・消化器病学会合同)

肝癌サーベイランスにおけるバイオマーカーの再評価

タイトル 肝PD10-9:

肝癌症例におけるHepatoma-derived growth factor(HDGF)の血中濃度測定に関する検討

演者 榎本 平之(兵庫医大・内科(肝・胆・膵科))
共同演者 中村 秀次(兵庫医大・内科(肝・胆・膵科)DELIMITER日生病院・消化器内科), 西口 修平(兵庫医大・内科(肝・胆・膵科))
抄録 【背景】我々は肝癌の進展に関連する新規因子発見を目指し,Hepatoma-derived growth factor (HDGF)をクローニングした.これまでにHDGFがヒト肝癌組織で高発現しており,その発現レベルが肝癌切除後の予後と関連することを報告してきた.我々の樹立した血中のHDGF濃度測定系を用い,肝癌の診断・治療経過との関連を検討した.【方法】(1)慢性肝炎,肝硬変,肝癌症例についてELISA法で患者血漿中のHDGF濃度を測定した.(2)肝癌に対するラジオ波焼灼術(RFA)後の再発率について,HDGF陽性例と陰性例とで経過を比較した.(3)血中HDGF濃度とAFP, PIVKA-2, AFP-L3との相関を検討した.【結果】(1)血漿HDGF陽性(0.3ng/ml以上)率は慢性肝炎の14.0%(陽性例の平均値0.91ng/ml),肝硬変の16.5%(1.59ng/ml)に対し,肝癌132症例で40.2%(2.63ng/ml)と有意に高値であった.(2)画像上単発肝癌62例の検討では,腫瘍径3cm未満の症例で平均値0.858ng/mlに対し,3cm以上の症例では平均値3.264ng/mlと有意に高値を示した.RFA施行例の経過に関する検討では,治療後1年以内での再発率はHDGF陰性例の17.4% (4/23)に対し,陽性例では63.6% (7/11)と有意に高い結果を示した.(3)血中HDGF濃度はAFP, PIVKA-2, AFP-L3いずれとも有意な相関を示さなかった.またAFP, PIVKA-2ともに正常例であった17例中8例(47.1%)において血漿HDGF値の上昇 (平均値2.20 ng/ml) が認められた.【結論】HDGFの血中濃度は他の腫瘍マーカーと相関せずに肝癌症例で有意に高値を示し,更に局所治療後の経過との関連が認められた.肝癌増殖因子であるHDGFの血中濃度測定が,診断や経過予測へ応用しうる可能性が示唆された.
索引用語 肝細胞癌, HDGF