セッション情報 パネルディスカッション10(肝臓学会・消化器病学会合同)

肝癌サーベイランスにおけるバイオマーカーの再評価

タイトル 肝PD10-10:

肝細胞癌におけるミトコンドリアCK高発現について

演者 池田 均(東京大大学院・臨床検査医学)
共同演者 榎奥 健一郎(東京大大学院・臨床検査医学), 小池 和彦(東京大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】我々は今まで,ミトコンドリア由来クレアチンキナーゼ(Creatine Kinase: CK)アイソザイムであるミトコンドリアCK(MtCK)が肝細胞癌(HCC)血中マーカーとして,AFPおよびPIVKA2に比肩し得る診断能を有し,早期診断にも有用であることを明らかにし,その機序の一つとして,肝癌細胞株においてMtCKが高発現していることを報告した.今回,この肝細胞癌におけるMtCK高発現の意義および機序を調べることを目的とした.【方法】肝癌細胞株としてMtCK発現の高いHepG2,Alex,HuH7を用い,MtCK発現抑制にはsiRNAを使用した.炎症や線維化を伴わずにミトコンドリア障害,脂肪肝からHCCを発症することが知られているHCVコア蛋白トランスジェニックマウスの肝臓におけるMtCK mRNA発現動態をリアルタイムPCR法にて検討した.【成績】いずれの肝癌細胞株においてもMtCK発現抑制により,生存細胞数は減少し,増殖,運動能,浸潤能は抑制された.最近,MtCKの負の発現調節因子として報告されたankyrin repeat and suppressor of cytokine signaling (SOCS) box protein 9 (ASB9)を強制発現させたところ,肝癌細胞株においてもMtCK発現は減少した.さらに,HCVコア蛋白トランスジェニックマウス肝臓におけるMtCK mRNA発現については,ミトコンドリア障害および脂肪肝を認めるものの肝発癌の無い6か月齢の肝臓,HCC発症を認める19か月齢の肝臓非癌部では,ノントランスジェニックマウス(6か月齢)肝臓と比べて変化なく,一方,19か月齢の癌部では7.7倍に亢進していた.【結論】肝細胞癌におけるMtCK高発現は,活発な増殖や転移に有利に働いている可能性があり,ASB9が肝細胞癌におけるMtCK発現の負の調節因子として作用していることが示唆された.HCCにおけるMtCK発現亢進は,肝障害や発癌の原因として知られているミトコンドリア障害とは関連せず,発癌自体と直接関連すると考えられた.
索引用語 ミトコンドリアCK, 肝細胞癌