セッション情報 |
パネルディスカッション11(消化器外科学会・消化器病学会合同)
進行胃癌に対する集学的治療の標準化に向けて
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タイトル |
外PD11-6:胃癌の臨床データ,組織像と発現分子による術前補助化学放射線療法の選択
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演者 |
井上 達史(香川県済生会病院・外科DELIMITER香川大・消化器外科) |
共同演者 |
谷内田 真一(香川大・消化器外科), 鈴木 康之(香川大・消化器外科) |
抄録 |
【目的】現在,局所高度進行胃癌の治療に対して,多くの臨床試験が組まれており,術前補助化学療法 (NAC)が標準治療となりつつある.しかし,我々は腫瘍の局所制御は術前補助化学放射線療法 (NACRT) が NAC より優れていると考え,臨床試験を実施してその結果を報告してきた.NACRT 後の腹膜転移再発は 6.7% と低く,予後の改善に貢献したと考えられたが,CRT 低感受性の症例 (組織学的効果判定 Grade 1a: 13.3%) や血行性転移再発をきたした症例 (26.6%) など,NAC を選択した方がよかったと考えられる症例も存在した.そこで,CRT の感受性や血行性転移再発の危険因子を同定し,NACRT 選択の指標について検討した.【対象・方法】NACRT を施行した 15 症例を対象とし,CRT 前の臨床データ(年齢・性別・占拠部位・腫瘍径・腫瘍マーカー),生検材料の組織像の特徴,粘液形質,CD44,HGF,c-MET,E-Cadherin,Her-2 の発現と CRT の感受性および血行性転移再発との関係を検討した.【結果】CRT の感受性は,CA19-9 の低い症例,低分化部分を有さない組織像と炎症細胞浸潤の弱い組織像の病変で有意に低かった (p<0.05).血行性転移は,CRT に感受性の高い病変で高率に認められ,CD44 陰性の病変で有意に多く認められた (p<0.05).さらに,CD44 陰性で血行性転移が認められた症例では,CRT 後に c-MET の強発現が高頻度で認められた.【考察】CRT の感受性を予測する因子を同定することができた.しかし,低感受性が予想される病変は血行性転移率が低い傾向にあり,腫瘍周囲に線維化を誘導するため,surgical margin を確保する意味で NACRT の適応は有用であると考えられた.NACRT は chemotherapy のプロトコールが NAC のものに比べて弱い傾向があるため,血行性転移の危険因子と考えられる CD44 陰性の病変では,適応とすべきではないと考えられた. |
索引用語 |
胃癌, 補助化学放射線療法 |