セッション情報 パネルディスカッション11(消化器外科学会・消化器病学会合同)

進行胃癌に対する集学的治療の標準化に向けて

タイトル 外PD11-9:

幽門狭窄を伴う進行胃癌の治療成績と今後の展望

演者 山下 裕玄(東京大・消化管外科)
共同演者 清水 伸幸(東京大・消化管外科), 瀬戸 泰之(東京大・消化管外科)
抄録 胃癌による狭窄のため経口摂取が不良となった場合,栄養障害の有無・T4bの可能性・遠隔転移の有無などから治療方針は多岐に渡る.術前の栄養サポート,手術治療も切除かバイパスか,あるいは化学療法を先行させるべきか迷うことも少なくなく,標準化された指針はないと考える.当院での成績を後方視的に検討し,将来の展望を考察したい.内視鏡が不通過,食物残渣あり,嘔吐などの症状を有するものを幽門狭窄症例とし,残胃の症例は除外した.2001年以降に当院で治療された92例の患者背景は,男/女 60/32,年齢中央値69歳(35-88歳).T2/3/4a/4b 4/12/39/37と漿膜浸潤陽性が82.6%を占め,Stage II/III/IV 9/24/58とstage IVが63%であった.施行術式は,幽門側胃切除48,胃空腸吻合31,胃全摘8,腸瘻造設3,試験開腹2.R0/R1/R2手術は29/10/53例であり,57.6%で肉眼的に腫瘍が遺残した.生存期間中央値は全体で12.1か月,R2では7.6か月であった.R2の幽門側胃切除と胃空腸吻合の生存期間中央値はそれぞれ7.9/8.0か月で同等であった.遠隔臓器転移(腹膜/肝/遠隔リンパ節/その他,洗浄細胞診陽性は除く)個数別の生存期間中央値は,0/1/2/3の順に49.0/8.4/7.6/4.9か月であった.R2の計53例のうち,術後に化学療法を行えたのは42例(80.8%)で,S-1単剤/CDDP併用/タキサン併用が8/22/6例であった.生存期間中央値はS-1使用例で9.6か月,S-1非使用例で6.0か月,化学療法なしでは2.5か月であった.幽門狭窄症状を呈する胃癌症例は初診時より高度に進行しており,予後の悪い集団であるという認識を持つ必要がある.R2の場合は,腫瘍減量の姑息的胃切除とバイパス手術では予後に差はなく,特に遠隔転移臓器が多い場合には侵襲の少ない後者が望ましいと考えられる.但し,S-1を中心とした化学療法を行ったとしても成績は良好とは言えず,放射線照射など他のmodalityを加えることを今後検討したい.
索引用語 胃癌, 幽門狭窄