セッション情報 パネルディスカッション12(消化器内視鏡学会)

内視鏡的乳頭切除術を巡る諸問題

タイトル 内PD12-2:

十二指腸乳頭部腫瘍の術前診断と内視鏡的乳頭切除術の治療成績について

演者 岡野 直樹(東邦大医療センター大森病院・消化器内科)
共同演者 五十嵐 良典(東邦大医療センター大森病院・消化器内科)
抄録 【背景】近年十二指腸乳頭部腫瘍に対し内視鏡的乳頭切除術が行われているが,その適応についてコンセンサスが得られていない.今回当院での十二指腸乳頭部腫瘍の術前診断および内視鏡的乳頭切除術の治療成績について報告する.【対象および方法】 2002年10月から2012年3月までに,内視鏡的乳頭切除術もしくは外科的手術を行った92例(男性:50例,女性42例)を対象とした.66例に対し内視鏡的乳頭切除術,26例に外科的手術を行った.全例で術前に生検診断を行い最終病理診断と対比した.またEUS/IDUSによる局所進展の評価が可能であった症例に対して診断能を検討した.さらに内視鏡的乳頭切除術症例の治療成績,後期合併症および予後について検討した.【結果】最終病理組織診断は腺腫が40例,腺腫内癌が10例,腺癌が31例,神経内分泌腫瘍が5例,その他は6例だった.術前生検正診率は74%(68/92)で腺腫 が74%(23/31),腺腫内癌が10%(1/10),腺癌が95%(38/40),その他が55%(6/11)だった.局所進展度診断能について十二指腸浸潤正診率はEUSが88%,IDUSが88%,胆管進展正診率はEUSが92%,IDUSが86%,膵管進展正診率はEUSが98%,IDUSが94%だった.内視鏡的乳頭切除術の成功率は91%(61/66)であった.後期合併症は胆嚢炎を2例,重症膵炎を1例,総胆管結石を1例,胆管口狭窄を1例,膵管口狭窄を3例,胆管口および膵管口狭窄を同時に認めたものが2例だった.胆管口狭窄の3例及び膵管口狭窄の2例は内視鏡的治療が可能であった.再生異型の1例に腺腫の出現,腺腫の1例と腺腫内癌の1例および腺癌の4例に遺残再発を認めた.腺腫内癌の1例および腺癌の1例は追加内視鏡切除,腺腫の2例と腺癌の1例は外科的手術を行い,その他の腺癌2例は経過観察を行った.【まとめ】内視鏡的乳頭切除術は腺腫に対して完全生検の観点から必須と考えられ,EUS/IDUSは局所進展度診断に有用である.腺腫および腺腫内癌は良い適応と思われるが,腺癌に対しては慎重な対応が必要と考える.
索引用語 十二指腸乳頭部腫瘍, 内視鏡的乳頭切除術