セッション情報 パネルディスカッション12(消化器内視鏡学会)

内視鏡的乳頭切除術を巡る諸問題

タイトル 内PD12-3:

十二指腸乳頭部腫瘍に対する内視鏡的アプローチの有用性と限界

演者 伊藤 啓(仙台市医療センター仙台オープン病院・消化器内科)
共同演者 洞口 淳(仙台市医療センター仙台オープン病院・消化器内科), 藤田 直孝(仙台市医療センター仙台オープン病院・消化器内科)
抄録 【目的】乳頭部腫瘍に対する内視鏡的アプローチの有用性と限界について検討した.【対象と方法】胆管腔内超音波検査(IDUS)を施行し,外科的切除術もしくは内視鏡的乳頭切除術(EP)を行った乳頭部腫瘍79例(男女比47:32,平均年齢68歳,腺腫20例,腺癌59例)を対象とした.CT/MRIで遠隔転移がないことを確認した後,IDUSによる進展度診断で治療法を決定した.EPの適応はIDUSでT1(WHO分類)と判断し,胆管膵管に進展のないものとした.深達度mの腺癌で断端陰性例では追加治療は不要と判断した.EPの成績および予後とIDUSの進展度診断能,EPの適応に関する正診率について検討した.【結果】IDUSでT1と診断したが胆管または膵管に腫瘍の進展がみられた15例とT2以上と診断した29例に外科治療を行い,35例にEPを施行した.生検による良悪性の正診率は84%であった.EP 35例では20例が腺腫,15例が腺癌で,T1 13例(m 11例,od 2例),T2 2例であった.T2の2例中1例で追加外科治療を行ったが,病理学的に遺残やリンパ節転移はなかった.他の1例では外科治療を希望せず,S-1による化学療法を行い3年間無再発生存中である.追加治療を希望しなかったodの1例ではEP後1年で多発肺転移がみられ化学療法を導入した.他のod癌1例は1ヶ月後他病死した.平均観察期間32ヶ月間で4例の腺腫に局所再発がみられ,APCで追加治療に成功した.外科治療例はT1 18例(m 10例,od 8例),T2 9例,T3-4 17例であった.外科治療を行ったm癌10例中2例の病理所見では,理論上EPで根治できると推定された.IDUSによる進展度診断能はT1 86%,T2 36%,T3-4 88%で全体では80%であり,胆管,膵管進展の正診率はそれぞれ99%であった.IDUSによるEPの適応に関する正診率は,感度89%,特異度95%,正診率92%であった.【結論】乳頭部腫瘍に対するIDUSはEP適応の決定に有用であるが,m癌の診断は不可能であり,EP後の詳細な病理学的検索に基づいた追加治療の検討が必要である.
索引用語 ERCP, 乳頭部癌