セッション情報 パネルディスカッション12(消化器内視鏡学会)

内視鏡的乳頭切除術を巡る諸問題

タイトル 内PD12-9追:

内視鏡的乳頭切除術の有用性

演者 石垣 尚志(広島大病院・消化器・代謝内科)
共同演者 佐々木 民人(広島大病院・消化器・代謝内科), 茶山 一彰(広島大病院・消化器・代謝内科)
抄録 【目的】当院における十二指腸乳頭部腫瘍に対する内視鏡的乳頭切除術(EP)の臨床成績を明らかにすることを目的とし,検討を行った.【方法】2006年4月から2013年1月までに当院で施行したEPの臨床成績を検討した.【成績】EPは29症例に施行し,平均年齢は64.1歳,男:女は25:4,EP後の観察期間中央値は21.9か月であった.27例(93.1%)で一括切除を施行し,2例では分割切除となった.切除標本は27例で回収できた.膵管ステントは25例に留置可能であった.早期合併症は4例(13.8%)に認め,内訳は,急性膵炎2例(1例は膵管ステント非留置例,2例とも軽症で保存的に軽快),急性胆管炎1例(保存的に軽快),出血1例(IVRによる塞栓術および輸血にて軽快),穿孔0例であった.内視鏡で観察された出血(先述の1出血例以外は全例oozing)の頻度は,当日17.2%,2日後39.8%,4日後26.9%,7日後15.8%であった.病理診断は,腺腫24例,腺腫内癌2例,内分泌癌1例であった.術前診断と切除標本の病理診断の一致率は,88.9%(24/27)であった.27例の切除標本のうち15例は断端陰性であったが,5例は熱凝固により断端の評価が困難で,7例で遺残の可能性を指摘された.この7例(全て腺腫)のうち3例では1~4か月後の内視鏡検査で遺残が明らかとなったが,残りの4例および断端の評価が困難であった5例では再発を認めていない(観察期間中央値27.4か月).悪性例では外科的追加治療を勧めたが,本人希望により経過観察を行っている.晩期合併症として,膵管口狭窄による閉塞性膵炎を3例(10.3%)に,総胆管結石を2例(6.9%)に認めた.前者はEPの0.8~2.5年後に発症し,3例とも狭窄に対する内視鏡的治療で軽快が得られ,後者はEPの1.0,2.4年後に発症し,いずれも内視鏡的截石を行った.【結論】EPには一定数の早期・晩期合併症があるものの,完治が得られると考えられる症例が多く,胆管・膵管への進展のない十二指腸乳頭部腺腫に対する第一選択の治療になりうると考えられた.
索引用語 EP, 十二指腸乳頭部腫瘍