セッション情報 パネルディスカッション13(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

進行肝癌に対する集学的治療の標準化に向けて

タイトル 外PD13-1指:

高度門脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌に対する肝切除の適応と再発予防-多施設共同試験に向けて-

演者 波多野 悦朗(京都大・肝胆膵・移植外科)
共同演者 猪飼 伊和夫(国立京都医療センター・外科), 上本 伸二(京都大・肝胆膵・移植外科)
抄録 【背景】高度門脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌のnatural courseは2.7カ月と極めて不良とされる (Hepatology, 1999). BCLCのガイドラインではportal invasionがあればsorafenibが推奨されている. 本邦のコンセンサスに基づく肝癌治療アルゴリズムでは, Vp1-2では肝切除もしくはTACEとあるが, Vp3-4では肝動注もしくはsorafenibが推奨されている. 【目的】当科における高度門脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌に対する肝切除の成績の変遷より, 切除適応を明らかにし再発予防策を検討する. 【結果】1985-1995年585例のHCCに対する肝切除のうちVp3は29例, Vp4は29例で, 5年生存率はVp3; 13%, Vp4; 3%と不良であった(Ann Surg, 1998). 1990-2002年のVp3-4症例における予後因子解析では (J Am Coll Surg, 2006), 腹水, PT, 腫瘍径が独立した予後因子となり, 腹水なし, PT75%以上, 腫瘍径5cm未満の5年生存率は52%であった. 肝切除のみでは術後早期の肝内再発を認めることより, 1995年より術後Epirubicin肝動注を, 2001年より術後FP肝動注を導入した. 2001-2007年におけるVp3-4; 47例の5年生存率は19%で, FP肝動注施行16例は肝動注なし群に比べ有意に良好な生存率を示したことにより, 肉眼的治癒切除プラス術後FP肝動注をVp3-4の標準療法とした. 【考察】従来,Vp3-4の肝切除の成績はVp1-2に比べ不良だが, 切除後の成績が良好な群も存在する. 特に, 術後に積極的な補助療法(肝動注)を導入することにより成績が向上すると報告している施設もある (World J Surg, 2013) . 上記をふまえて, 高度門脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌に対する肝切除の成績と術前後の補助療法の実際を明らかにすることを目的に日本肝胆膵外科学会, 肝臓プロジェクトの一環として多施設共同試験 (SHEAVE)を開始した. 全国20施設における2001-2010年Vp3-4肝切除症例を集計し, 予後因子解析, 補助療法の実際を明らかにする予定である.
索引用語 門脈腫瘍栓, 肝動注