抄録 |
背景と目的:NAFLDはメタボリック症候群の一表現型と考えられ、高血圧の関与も報告されている。本研究では高血圧惹起NAFLDモデルを用いて、NAFLD成立・進展における脂質・胆汁酸代謝変動を核内レセプターに着目して検討するとともに、その酸化ストレスへの関与を考察した。方法:SHR(8w齢)をコリン欠乏(CD)食にて飼育(5w)したNAFLDモデルについて、1)脂質代謝動態(肝組織中および血清脂質変化)、2)肝炎病態(血中逸脱酵素、酸化ストレス)、3)脂質・胆汁酸代謝変動(核内レセプターおよび脂質・胆汁酸合成関連酵素遺伝子発現)を評価して、正常血圧WKYラットのそれと比較した。結果と考察:1)SHRで肝脂質代謝関連遺伝子(PPARα、ACOX、MCAD、MTP、APO-B)の発現低下を認め、肝内への脂質過剰蓄積脂肪化が脂肪酸酸化低下とVLDL分泌低下に起因することを示唆した。2)肝TBARS増加と肝SOD活性低下も認め、脂肪性肝炎が酸化ストレス亢進に起因することを示した。3)LXR遺伝子発現はSHRにおいてCD食負荷により減弱した(α-75%、β -72%)、胆汁酸代謝関連酵素(Cyp7a1, Cyp8b1, Cyp27a1)も発現低下を認めた(-65%, -68%, -53%)。一方、胆汁排泄系(abcb4,abcb11,abcc2,abcg5/g8)でも発現低下を認めた(-81%,-80%,-83%,-70%)。結論:高血圧惹起NAFLDモデルにおけるLXR発現低下とそれに伴う胆汁酸代謝関連酵素発現低下が一つの重要な発症メカニズムであることが示唆された。 |