セッション情報 パネルディスカッション13(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

進行肝癌に対する集学的治療の標準化に向けて

タイトル 肝PD13-6:

当科における切除不能脈管浸潤合併肝細胞癌に対する治療成績

演者 新関 敬(久留米大病院・消化器内科)
共同演者 田尻 能祥(久留米大病院・消化器内科), 佐田 通夫(久留米大病院・消化器内科)
抄録 【目的】高度脈管浸潤を有する進行肝細胞癌の予後は依然として不良であり,治療に関しては肝動注化学療法(HAIC),Sorafenib,放射線治療(RT)などが試みられているが,当院ではHAICを主体とした集学的治療を施行してきた.検討1)切除非適応の脈管浸潤合併Stage IvA HCCを対象にNew FP療法(AP&T 2010; 32: 543-550) (N群)の治療効果を,Low-dose FP(L群)施行例をcontrolとして比較した.検討2)後治療としてRTを施行した症例の治療効果を検討した.
【方法】N群は2008年4月から2012年12月に開始した58例,L群はそれ以前の83例の計141例を対象とした.N群はアイエーコール50mg,リピオドール5~10mlの懸濁液と5-FU:250mgをday1にone shot,5-FU:1250mgを5日間かけて持続投与を1クールとし,入院中に7日毎に2~3クール施行,退院後は2~3週毎に懸濁液半量と5-FU:500mgを2時間で投与した.
【患者背景】平均年齢:66歳,HCV:HBV:NBNC =96:28:19,Child-Pugh score (C-P) A:B= 85:56,血小板数(Plt)平均値;13.7万,L群: N群= 83:58,VP4:3 or 2=42:88,VV有:無=25:116,平均最大腫瘍径:91mm
【成績1】全141例の生存期間中央値(MST)は10.8ヶ月,RECISTでの治療効果判定で奏効率は45%,regimen別ではL群:35%,N群:59%とN群が有意に良好であった.P-C:Aの85例におけるregimen別のMST/奏効率はL 群:16.1ヶ月/44%,N群:30.0ヶ月/70%で有意にN群が良好であったが,P-C:Bの56例ではL 群:7.3ヶ月/23%,N群:6.8ヶ月/38%で有意差を認めなかった.
【成績2】C-P7点以下で脈管浸潤に対する治療効果が不十分であった22例24病変に後治療としてRTを施行した.標的病変に対する奏効率は64%で,RT後のMSTは9.5ヶ月であり,特にVVに対する奏効率は88%(7/8)と良好であった.
【結論】P-C AのStage IvA HCCではNew FP療法は奏効率,生存期間ともに優れ第一選択として適切と考えられた.また,後治療としてはRTが奏効率,生存期間ともに比較的良好で,有用な選択肢として考えられる.P-C B症例は依然予後不良で今後の課題である.
索引用語 肝動注化学療法, 放射線治療