セッション情報 パネルディスカッション13(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

進行肝癌に対する集学的治療の標準化に向けて

タイトル 肝PD13-7:

進行肝細胞癌に対する分子標的治療,肝動注療法の位置づけと今後の展開

演者 中馬 誠(北海道大大学院・消化器内科学)
共同演者 坂本 直哉(北海道大大学院・消化器内科学), 山本 義也(市立函館病院・消化器病センター)
抄録 【目的】進行肝細胞癌に対する集学的治療の標準化に向けて,治療成績からみた病期別のSorafenibと肝動注療法の適切な位置づけの検証を行った.【方法】2002年から2012年までに進行肝細胞癌(Stage III, IVA,B)に対して,肝動注療法が施行された93例(H群)とSorafenibが投与された87例(S群, 短期中止例除く)を対象とし,両群における病期別の1)治療効果,2)生存率(MST)を比較検討した.【成績】両群:H群vs S群の背景因子として,Child-Pugh(A/B/C):54/37/2例vs 75/12/0例,主病巣の大きさ:77mm vs 59mm,Stage (III/IVA/VB):27/51/15 vs 29/18/40,門脈腫瘍塞栓(VP有/無):56/35 vs 28/59例であった.1) 6週後RECICT評価での奏功率は,H群30.1%, S群3.5% (P<0.05)であったが,病勢制御率(CR+PR+SD)はH群 68.9%,S群58.6% (P= 0.74)であった.病期別の病勢制御率は,H群 vs S群:StageIII;80.0% vs 70.2%(P= 0.65),IVA;76.5% vs 44.0% (P<0.05),IVB;40.0% vs 57.5% (P= 0.25)であり,IVAではH群が良好であった.2)病期別のMSTについては,Stage III:H群/S群;15.4/16.0ヶ月(P= 0.72),IVA: H群/S群; 10.4/4.4ヶ月(P<0.05),IVB: H群/S群; 4.0/10.2ヶ月(P<0.05),IVAに関してはH群,IVBではS群が良好であったが,IVBのS群でVP有/無のMSTは3.9/12.5ヶ月(P<0.05)であり,VPを伴うIVBではH群,S群ともに予後不良であった.なお,IVAにおけるH群では,放射線併用有り/無しで,MST 11.9/8.4ヶ月(P<0.05)であった.【結語】進行肝細胞癌の集学的治療の標準化として,治療成績からStage IIIではSorafenibと肝動注療法が同等,IVAでは肝動注療法(放射線併用),VPを伴わないIVBではSorafenibが推奨されるが,IVBのVP症例は更なる治療法の改善が望まれる.分子標的薬と殺細胞性薬剤併用による治療効果増強の検証として,現在Sorafenib+5-FU治療の臨床第 II相試験施行中であり(病勢制御率75%,MST15.2ヶ月),その現状についても報告する.
索引用語 肝細胞癌, Sorafenib