セッション情報 パネルディスカッション13(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

進行肝癌に対する集学的治療の標準化に向けて

タイトル 消PD13-10:

門脈腫瘍栓を有する肝細胞癌治療における陽子線の役割

演者 福田 邦明(筑波大・消化器内科)
共同演者 安部井 誠人(筑波大・消化器内科), 櫻井 英幸(筑波大・放射線腫瘍科)
抄録 【緒言】門脈腫瘍栓(PVTT)を有する進行肝癌は治療に難渋し,PVTT進展による肝機能低下を来すため予後不良である.通常進行が早く,外科的切除が肝不全を防ぐ意味でも有用である.手術困難例に対しては動注やネクサバールの投与が行われるが,非腫瘍栓例と比べ成績は悪い.我々はこれまで陽子線治療(PBT)がPVTTに対し有効であることを報告してきた.(菅原ら, Strahlenther Onkol.185(12);782-8,2009)【目的】PVTTを伴う進行肝癌に対するPBTの治療成績を検証する.【方法】2004年3月から2009年12月までに当院でPBTを行ったVP3/4肝癌患者34例を対象とし,累積生存率をKaplan-Meier法を用いて解析した.【成績】性別:男25/女9,年齢:69歳(52-86),Child-Pugh A/B 22/12,VP3/4 19/15,AFP 29ng/ml(2-71938),PIVKA2 444mAIU/ml(16-206190),初発/再発 18/16,腫瘍全体照射/部分照射 19/15.34例全体のMST 22ヶ月,2年生存率 47.5%,腫瘍全体照射19例のMST 36ヶ月,2年/5年生存率68.4%/ 39.9%であった.照射部の効果判定がSD以上vs.PDで生存期間に有意差(p<0.001)を認め,全体照射vs.部分照射でも有意差(p<0.01)を認めた.一方で,初発/再発やVp 3/4,AFP, PIVKA2, L3分画に関しては有意差を認めなかった.【考察】今回の成績は,菅原らの2005年までの当施設の成績と比べ良好であった(MST 22ヶ月vs.36ヶ月).これはPBTに加えネクサバールを含めたモダリティーの進歩により集学的治療の成績が良くなったことも一因と推察する.また,PBTのPVTTに対する局所制御率は良好で,時に門脈再開通例も経験することから,その後の再発に対しても治療が可能となることも生存率が良好であった理由と考える.PBTは治療に時間を要するため,極めて進行の早い腫瘍に対し間に合わないという限界もあるが,侵襲が低く高齢者や合併症を有する患者に対しても同様の治療が出来るため,手術困難なPVTT症例に対する次の選択肢として期待される.【結語】PBTは高度進行肝癌に対する集学的治療の一翼を担える治療法である.
索引用語 肝細胞癌, 陽子線治療