セッション情報 パネルディスカッション14(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

大腸癌肝転移に対する集学的治療の標準化へ向けて

タイトル PD14-基調講演2:

「切除不能」大腸癌肝転移症例の化学療法後肝切除の安全性と予後についての検討

演者 佐野 圭二(帝京大・外科)
共同演者 幕内 雅敏(日本赤十字社医療センター)
抄録 【背景】近年大腸癌に対する全身化学療法が急速に発達した.それにより肝内に限局しながらも転移個数・占居部位などで切除不能と判断され全身化学療法を施行され,腫瘍縮小により切除可能となる症例も出てきた.さらに切除可能症例に対する術前補助化学療法も臨床研究がおこなわれている.【目的】肝切除前に化学療法を施行された症例において肝切除の安全性と予後を検討する.【対象】日本赤十字社医療センターで1年間に施行した110例の肝切除のうち52例が大腸癌肝転移症例であり,うち前医で「切除不能」と診断され化学療法を行われていた27例を対象とした【結果】前医での術前化学療法はうち23例(85%)がFOLFOXあるいはFOLFIRIを用いていた.化学療法施行期間の中間値は6か月[2-38ヶ月]であった.肝内多発のため切除不能と診断された例が25例(92%),その他単発で切除不能の要因は巨大腫瘍,尾状葉腫瘍でそれぞれ1例ずつであった.術死・在院死は0%であった.中間値25か月[11-77ヶ月]の観察期間で,16例(59%)が生存,うち6例(22%)が調査時に非担癌生存である.1回の肝切除で無再発例はなく,最高5回肝切除を行った.切除不能肝外転移再発を来たした症例が21例(78%)あり化学療法を再開したが,化学療法を休薬できた期間は中間値で13か月[2-41ヶ月]あった.【結語】化学療法後も安全に肝切除を施行しえた.切除後非担癌生存は22%であったが,再発までの休薬期間は中間値で1年以上得られ,その間生存期間を延長しえた可能性がある.
索引用語 多発肝転移, 切除後再発