抄録 |
【背景と目的】大腸癌肝転移は外科治療が推奨されているものの,高率に起こる再発をいかに抑制するかが課題である.我々はこれまでに,再発リスク因子として肝転移5個以上,原発巣深達度se以深,リンパ節転移(N)陽性,リンパ管侵襲ly2以上,脈管侵襲v2以上を報告してきた.さらに2008年からはこれらの高リスク症例にLOHPあるいはCPT11併用による術後補助化学療法(新規AC)(FOLFOX, FOLFIRI, ZELOX等)を導入してきた.今回,我々は後方視的にこの新規ACの導入基準について検証した. 【対象と方法】1994年から2011年末までの初回肝転移手術症例259例(重複癌除く)を対象とした.1)化学療法の進歩による効果の違いをみるために2008年以前の旧AC施行50例と新規AC施行32例の無再発生存率(RFS),生存率(OS)を比較した.2)全259例中,上記リスク因子を223例が保有しており,そのうち新規AC(+)32例とACなし(-)142例を比較検討した. 【結果】1)旧AC50例(肝動注6例,全身療法29例,経口剤15例),新規ACの1,2年RFSは34.0%, 12.2%v.s. 68.9%, 33.9%と新規ACが有意に良好であった(p<0.01).OSも新規ACが有意に良好で (p=0.01),化学療法の違いによる差が明らかであった.2)OS, RFSで新規AC(+)はAC(-)より有意に良好であった(p=0.02, p=0.001).RFS解析では,新規ACによる再発抑制効果は5個以上(リスク比(RR) 0.61, p<0.001),N陽性(RR0.75, p=0.03), ly2以上(RR0.65, p<0.01)で認められた.さらに,OS解析で新規ACによる予後改善は5個以上(RR0.53, p=0.01),N陽性(RR 0.66, p=0.03)で有意であった. 【結語】肝転移5個以上,N陽性の因子を有する症例に対し,術後補助化学療法を導入することで再発抑制,予後延長効果が期待できる. |