セッション情報 |
パネルディスカッション14(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)
大腸癌肝転移に対する集学的治療の標準化へ向けて
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タイトル |
外PD14-4:大腸癌肝転移に対する肝切除術前後の化学療法とその治療成績の検討
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演者 |
尾原 伸作(奈良県立医大・消化器・総合外科) |
共同演者 |
野見 武男(奈良県立医大・消化器・総合外科), 中島 祥介(奈良県立医大・消化器・総合外科) |
抄録 |
【目的】大腸癌の肝転移は根治切除が可能であれば手術による切除が推奨されている.しかし切除後に早期再発を来たす症例もみられる.当科の検討では肝切除後1年以内の早期に再発が認められた症例は予後不良との結果がある.近年,大腸癌の化学療法は分子標的薬を含め進歩が著明であり,早期再発が危惧されるような症例においては肝切除に先立って術前化学療法を行うといった選択枝も考え得る.また現在のところ,肝切除術後の補助化学療法の効果は不明である.今回,当科における大腸癌肝転移切除症例の治療成績と,肝切除術前後の化学療法との関連についてretrospectiveに検討した.【方法】1990年1月から2012年6月までの当科における大腸癌肝転移切除例の142例を対象とした.肝切除時に肝転移以外の遠隔転移を認めた症例は除外した.肝切除術の前後における化学療法の有無と治療成績との関連を検討した.【成績】肝切除術後に補助化学療法を施行した91例と,補助化学療法なしの51例を比較したが,5年生存率はそれぞれ36.9%,40.4%であり有意差はみられなかった(Logrank p=0.739).また,肝切除術前に化学療法を施行した34例と術前化学療法なしの108例との比較でも,5年生存率は32.7%と39.6%で2群間に有意差はなかった(Logrank p=0.597).術前後の化学療法内容を5-FU based, Oxaliplatin based, 肝動注などに細分類しても,有意差はみられなかった.なお分子標的薬が使用されていたのは,術前5例,術後2例のみであった.【結論】当科では切除可能な大腸癌肝転移は術前治療なしでの切除を原則としている.現段階で大腸癌肝転移に対する肝切除術前の化学療法の有効性は認めなかったので,その方針の妥当性が担保された.今後の症例の蓄積により,術前後の化学療法に分子標的薬を併用した際の治療成績の変化についてなどの検討が必要と考える. |
索引用語 |
大腸癌, 肝転移 |