抄録 |
【背景】新規化学療法導入後,大腸癌肝転移の治療は外科治療が根治への一翼を担うようになったが術後2/3の症例は再発する.そのうち1/3は肝限局再発で再肝切除を視野に入れた治療方針が検討されている.しかし,これら症例は長期間の化学療法による肝障害が問題である.【目的】再肝切除例の患者背景を検討し外科治療の最適な集団を検討.【方法】2001年から2012年の転移性肝癌切除例351例で,原発が大腸癌であり,治癒切除が行われた288例の内,重複51例を除く,再肝切除61例(2回目38例,3回目23例)と,初回肝切除176例を比較した.患者背景因子(年齢,原発腫瘍条件,転移腫瘍条件,化学療法の既往と期間,肝機能),周術期因子(切除個数,手術時間,肝阻血時間,出血量),術後因子(合併症,術後在院期間,生存率)に大別し至適治療対象を検討.【結果】再肝切除68.9%(2回目60.5%,3回目82.6%),初回切除39.8%(p=0.01)に化学療法が導入され,その施行期間は(中央値88日 範囲28-416 vs. 196, 56-366, P=0.02)であった.肝転移の最大径は初回肝切除が優位に大きく(36mm, 8-13 vs. 22, 16-161, P=0.04),血中CEA値(24.1ng/mL 1.3-2813 vs. 11.7, 0.1-1065, P=0.01)は有意に高かった.原発大腸癌の進行度および術前肝予備に有意差を認めなかった.手術時間(P=0.19),肝阻血時間(P=0.21)および出血量(P=0.66)に両群間に有意差を認めなかった.背景肝は肝切除回数に応じて脂肪化率は(44.3%(2回目34.2%,3回目65.2%)vs. 16.8%, P=0.02)が有意に上昇していた.全合併症率および術後在院期間に有意差を認めなかった.3-,5-年生存率は(57.5%, 41.6% vs. 50.1%, 35.2%, p=0.23)両群間でほぼ同等の成績であった.多変量解析では腫瘍の個数(5個未満:HR4.94,95%信頼区間[1.44-9.69]),肝切除までの期間(前回肝切除から期間500日以上:HR2.41,[1.21-14.4])が長期生存の独立因子であった.【結語】異時性,5個未満の肝転移症例は長期化学療法後であっても積極的な外科治療が有効な集団である. |