抄録 |
【目的】NCCNガイドラインは,動脈系と門脈系の浸潤程度にてresectable(R),borderline resectable(BR),unresectable(UR)に分類し治療指針を明示.2010年の第37回日本膵切研究会(会長:伊佐地秀司)でBR膵癌の膵切アンケートを集計し報告(JHPBS2013).一方,当科ではBR膵癌に対して化学放射線療法(CRT)後に切除を施行.膵切集計と当科の成績を比較し,BR膵癌の集学的治療の標準化について検討.【対象】<膵切集計>2002年6月から2005年5月に全国78施設で治癒切除を目指して開腹手術したBR膵頭体部癌624例で治療成績や予後因子を解析.尚,血管浸潤別に門脈因子のみ(BR-P),動脈因子のみ(BR-A),両因子(BR-AP)の3群に分けて比較検討.<当科CRT>2005年2月~2012年12月の膵癌170例(UICC-T2:1,T3:79,T4:90).CRT:化学療法は前期(2005.2-2011.9)はGEM 800mg/m2,後期(2011.10-2012.12)はGEM600mg/m2+S-1を60mg/m2.3次元原体照射は45-50.4Gy/25-28fr【結果】<膵切集計>切除率86.4%,R0切除率65.9%.多変量解析による独立予後因子は,全症例で大血管浸潤,術前加療,切除,術後補助療法,切除例は大血管浸潤と癌遺残(R).BR-PはBR-AとBR-APに比べて有意に予後良好.<当科CRT>170例はR17,BR79,UR74例に分類.CRT完遂率は97%,再評価時遠隔転移発現率はR,BR,URで11.8,11.3,24.7%.全症例3生率は24.7%でR, BR, URは44.6,32.3, 6.4%と3群間に有意差(P=0.001),切除症例(n=98)で77.8, 37.7,13.4%.膵切集計の術前加療なし(S群)と当科(CRT群)とを比較すると,BR-P,BR-A, BR-APのMST(月)はS群(13.4, 13.4,10.5)に対し,CRT群(27.6, 16.5, 16.1)で,特にBR-Pにて著明な延長.CRT群の切除率は78.2%であるが,R0達成率は83.6%と良好.【結語】BR膵癌は,門脈浸潤のみのものと動脈浸潤ありでは予後に有意差があり,これらは区別すべき.BR膵癌に対するCRTは手術適応の厳格化,R0達成率の向上により予後の改善に貢献し,特に門脈因子のみの症例には有用と考えられた. |