セッション情報 パネルディスカッション15(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

進行膵癌に対する集学的治療の標準化に向けて

タイトル 外PD15-3指:

化学(放射線)療法が奏功している切除不能膵癌に対する外科切除の役割-日本肝胆膵外科学会 膵01研究最終報告-

演者 里井 壯平(日本肝胆膵外科学会プロジェクト委員会膵01研究グループ)
共同演者 宮崎 勝(日本肝胆膵外科学会プロジェクト委員会膵01研究グループ), 高田 忠敬(日本肝胆膵外科学会プロジェクト委員会膵01研究グループ)
抄録 【目的】今回われわれは,化学(放射線)療法が奏功している画像上切除不能膵癌に対し切除手術を加える意義を明らかにすること,適切な手術適応とそのタイミングを探ることを目的に,全国の高度技能医修練施設にアンケート調査を行い,症例を集積して解析した.【対象と方法】切除不能膵癌に対して化学(放射線)療法が奏功し,初回治療開始後6ヶ月以降に切除した58名をadjuvant surgery群(Surg群),切除なしの101名をcontrol群として両群間の背景因子や生存曲線を比較した.最終的に膵管癌と病理診断されていることを適格条件のひとつとした.【結果】Surg群58名(局所進行膵癌41名と遠隔転移17名)は,化学療法32名,化学放射線療法26名で,画像上CR/PRと判断された患者は46名(79%)で,12名はSDと判定された.全患者の手術までの日数は中央値273.5日(182-1418)であった.膵頭十二指腸切除(n=31),膵体尾部切除(n=24),膵全摘(n=3)が施行され,66%に何らかの合併切除が併施された.全合併症発生率は47%で,在院死は1.7%に認められた.Surg群の累積1,3,5年生存率は95,53,34%とcontrol群の88,18,10%と比較して有意に良好であった(p<0.0001).2群間の背景因子の差を補正するpropensity score analysisを行ったところ,外科切除の付加は有意に独立した予後予測因子であった(hazard ratio 0.569,95% confidential interval 0.36-0.89).手術までの期間別の層別解析では,初回治療から8ヶ月以降に手術した患者は,control群や6-8ヶ月までに切除した患者と比較して有意に予後良好であった(p<0.005).【結語】画像上切除不能膵癌患者において,集学的治療のひとつとしての外科治療の付加は,安全かつ長期予後の期待できる治療法であった.特に初回治療から8ヶ月以上経過した患者に対する外科手術は,予後改善に重要な役割を有する可能性が示唆された.
索引用語 切除不能膵癌, adjuvant surgery