セッション情報 パネルディスカッション15(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

進行膵癌に対する集学的治療の標準化に向けて

タイトル 消PD15-4:

局所進行膵癌に対する非切除治療の長期成績とadjuvant surgeryの試み

演者 須藤 研太郎(千葉県がんセンター・消化器内科)
共同演者 貝沼 修(千葉県がんセンター・消化器外科), 石原 武(千葉大大学院・消化器・腎臓内科学)
抄録 【目的】近年,化学療法および放射線治療の進歩により,切除不能局所進行膵癌の治療成績は改善しており,生存期間中央値(MST)15ヶ月を越える臨床試験も複数報告される.また,化学療法や化学放射線療法(CRT)が奏効し,根治切除可能となった症例も報告され,conversion therapyとしての役割にも期待される.本検討では局所進行膵癌に対するCRT(S-1併用放射線療法ほか)および全身化学療法(GEM / GEM+S-1療法 / GEM+エルロチニブ療法)の長期成績,および奏効後に外科切除を行った症例を供覧し,今後の課題について考察を行う.【方法】当グループにて治療を行った局所進行膵癌183例を対象として長期成績につき検討を行った.【成績】CRTを90例(S-1併用62例,CDDP±5-FU 併用28例),全身化学療法を93例(GEM 50例,GEM+S-1療法39例,GEM+エルロチニブ 3例,S-1 1例)に施行した.背景因子が異なるため正確な比較は困難だが,生存期間中央値(MST)はCRT群15.6ヶ月,化学療法群12.5ヶ月(p=0.325)であった.長期生存例はCRT施行例に多い傾向があり,10年無増悪生存例を含め5年生存率5.2% であった.治療法別のMSTの比較ではS-1併用放射線療法16.7ヶ月,GEM+S-1 14.6ヶ月,GEM 11.5ヶ月,CDDP±5-FU+RT 11.2ヶ月であった.外科切除は12例に行われ,9例に根治切除を施行し得た.初回治療から外科切除までの期間は中央値9ヶ月であり,切除例におけるMSTは33.9ヶ月であった.【結論】CRT施行例において10年無増悪生存を含む長期生存例が認められた.治療法別の検討ではS-1併用放射線療法およびGEM+S-1療法において良好な傾向があった.さらなる予後向上のためには奏効例に対する外科切除の役割に期待されるが,長期成績は今後の課題であり切除適応やタイミングなど多数例での検討が必要である.
索引用語 膵癌, 化学放射線療法