セッション情報 パネルディスカッション15(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

進行膵癌に対する集学的治療の標準化に向けて

タイトル 外PD15-5:

進行膵癌に対する集学的治療標準化の可能性

演者 庄 雅之(奈良県立医大・消化器・総合外科)
共同演者 赤堀 宇広(奈良県立医大・消化器・総合外科), 中島 祥介(奈良県立医大・消化器・総合外科)
抄録 【目的】進行膵癌に対する治療標準化に向けて,Borderline resectable(BR)膵癌および切除不能膵癌に対する治療成績を解析・検討した.【方法】自施設治療成績及び国内外の臨床試験結果に基づき,当科における現在の進行膵癌治療方針は,(1) BRを含む切除可能膵癌にはFull-dose GEM併用の術前化学放射線治療(NACRT)及び術後補助化学療法,(2) 局所進行切除不能膵癌(LAPC)にはGEM/S-1(GS)療法,(3) 転移性切除不能膵癌(MPC)にはGEM/エルロチニブ(GE)療法を第一選択としている.本検討では,NACRTを施行したBR46例およびLAPC40例,MPC74例の計160例を対象とした.【結果】(1) NACRT施行BR症例における病理学的N0率74%,R0率91%であった.局所再発は2例のみであり,NACRTの局所制御効果は顕著であった.予後はMSTが23Mで,1/2/3年生存率は84/47/30%であった.術後補助化学療法を完遂し得た症例は50%に留まり,完遂例と非完遂例には有意な予後の差がみられた(MST:32M vs.16M,P=0.002).(2) 切除不能膵癌において,LAPCの予後は,MPCに比し有意に良好であった(MST:19M vs.9M,P<0.0001).LAPCの20%(8例)の症例に対して,GS療法により顕著な腫瘍の縮小が得られたため,NACRTを行った後,切除(adjuvant surgery)を行った.8例中n+は1例のみで,全例R0であった.現在5例が無再発・生存中である(MST:24M, 18-56M).(3) MPCでは,特に肝転移症例においてエルロチニブ使用例は,非使用例に比し予後改善の傾向を認め,一部に長期生存例も認めた.しかし一方,現行治療では治療限界があると思われた.【結論】進行膵癌において,病態に合わせた化学療法剤の適切な選択に基づく集学的治療により予後改善の可能性が示唆された.局所進行切除不能膵癌においてもAdjuvant Surgeryにより根治となる可能性もあり,集学的治療の一環としての切除の重要性が示唆された.一方,NACRT,Adjuvant Surgery,遠隔転移例に対する治療標準化に向けては多施設での検証が必要と思われる.
索引用語 膵癌, 集学的治療