セッション情報 パネルディスカッション15(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

進行膵癌に対する集学的治療の標準化に向けて

タイトル 外PD15-6:

局所進行切除不能膵癌に対するTS-1併用化学放射線療法第2・3相臨床試験

演者 新地 洋之(鹿児島大・保健学科)
共同演者 夏越 祥次(鹿児島大大学院・消化器・乳腺甲状腺外科学), 高尾 尊身(鹿児島大フロンティアサイエンス研究推進センター)
抄録 【目的】切除不能膵癌に対する新しい治療法として,TS-1併用加速過分割放射線療法を試みており,その有効性および安全性について第2相,3相臨床試験の結果を報告する.【方法】審査腹腔鏡検査により,遠隔転移のない局所進行切除不能膵癌50例を対象としたTS-1併用化学放射線療法第2相臨床試験を施行した.さらに,TS-1併用放射線化学療法の優越性の有無を検証するために,TS-1単独化学療法とのランダム化比較第3相臨床試験を行った.体外放射線は1回1.25Gyを朝夕2回の2.5Gy/日,週5日間で4週間,計50Gy施行.TS-1は80mg/m2/日(分2)を3週間投与.維持化学療法として,TS-1 80mg/m2/日を2週投与,2週休薬として,1年間継続投与した.【結果】第2相試験の結果,抗腫瘍効果はPR 15例,SD 23例で,奏効率30%,病勢制御率76%(38/50例)であった.生存期間中央値 (MST) は14.3カ月(5.4-72カ月),1年生存率 は62%,2年生存率は28%,5年生存率は7%.3年以上の生存例を7例,5年以上の長期生存例を2例認めた.2例に著明な腫瘍縮小を認め,化学放射線治療終了後各々3カ月,11カ月に外科的に根治切除しえた.前者は切除後27カ月に腹膜再発にて死亡,後者は切除後38カ月無再発生存中である.第3相試験の結果,TS-1併用放射線化学療法群17例のMSTは19.7カ月,1年生存率 79%,2年生存率30%に対して,TS-1単独化学療法群17例のMSTは12.5カ月,1年生存率 は58%,2年生存率は10%であり,TS-1併用放射線化学療法群がTS-1単独化学療法群に比べ,生存期間が有意に良好であった.両群ともにGrade 4以上の重篤な有害事象を認めなかった.【考察】膵癌に対するTS-1併用化学放射線療法は忍容性が良好で,有効な治療法であることが示唆された.今後,TS-1併用化学放射線療法を主体とした集学治療が期待できる.
索引用語 膵癌, 化学放射線療法