セッション情報 パネルディスカッション16(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

進行胆道癌に対する集学的治療の標準化に向けて

タイトル 外PD16-3:

肝門部胆管癌術後補助化学療法の現状と術前化学療法,残肝予備能との関連

演者 森 隆太郎(横浜市立大・消化器・腫瘍外科)
共同演者 松山 隆生(横浜市立大・消化器・腫瘍外科), 遠藤 格(横浜市立大・消化器・腫瘍外科)
抄録 【目的】肝門部胆管癌に対する術前(NAC)・術後補助化学療法(AC)の現状を解析し,残肝予備能からみた補助化学療法の実施可能性を明らかにする.【方法】計画的ACを導入した2005年4月以降の肝門部胆管癌切除50例のうち術後ACを施行した31例を対象とした.このうち21例はNACを施行しACとしてgemcitabine (GEM) + S1(GS),未施行症例はGEMを術後6か月間投与した.術前肝機能,肝容量とNAC施行のAC実施率に与える影響を比較検討した.【結果】年齢68歳,男女比21:10.術式は肝右葉・尾状葉切除15例(48%),左葉・尾状葉7例(23%),左右三区域・尾状葉4例(13%)で,血管合併切除は27例(87%)に,門脈塞栓を18例(58%)に施行した.手術時間856分,出血量1329ml,平均在院日数は24日だった.ACの投与レジメンは, GS 15例(48%),GEM 11例(35%),S1 5例(16%)で,実施率62%.NAC施行かつ術後ACにGSを施行したNAC-AC-GS 15例では,S1のRDI 89%,GEMのRDI 47%で,減量もしくは中止理由は13例が骨髄抑制,1例は再発だった.一方,NACでACにGEMを施行したNonNAC-AC-GEM  9例では,GEMのRDI 37%で,6例が骨髄抑制のため減量していた.NAC-AC-GS,NonNAC-AC-GEMそれぞれで,GEMのRDI中央値(40%)をcutoff値に設定し,切除・残肝容量, ICGR15, ICGK,血管合併切除,手術時間,出血量,術後合併症,術後放射線照射の有無を二群間で比較すると,両レジメンともに高RDI群は肝切除率が低く,残肝率が高く,合併症発生率が低い傾向を認めた.特にNAC-AC-GSでは高RDI群で有意にICGR15が低く,ICGKが高値であった(p=0.014, 0.014).一方,NAC-AC-GS 15例でNACとACでのRDIを比較すると,GEM,S1いずれのRDIも有意にNACが上回っていた(p<0.001, p=0.007).【結語】肝門部胆管癌におけるGEMのRDIは,S1併用により減少しないものの,術後はNACと比較し有意に少なかった.特に肝切除量が大きく,ICG不良例は術後投与量減少が予測されるため,術前投与がより有用である可能性が示唆された.
索引用語 肝門部胆管癌, 術後補助化学療法