セッション情報 パネルディスカッション16(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

進行胆道癌に対する集学的治療の標準化に向けて

タイトル 外PD16-4:

集学的治療としての切除企図胆管癌に対する術前化学放射線療法

演者 片寄 友(東北大大学院・統合がん治療外科学)
共同演者 中川 圭(東北大大学院・統合がん治療外科学), 海野 倫明(東北大大学院・消化器外科学)
抄録 【目的】胆道癌は症例数が少ないため臨床研究が進まないため,前向き試験の結果から胆道癌の治療法を検討することが有用であると考える.今回われわれは,第II相試験であるネオアジュバント化学放射線療法(NACRAC)の中間解析の結果からNACRACの安全性と効果を検討した.【方法と対象】NACRACのレジメは,体外照射を45Gy(1.8Gy x 25回)と塩酸ゲムシタビン(600mg/m,2投1休x2)である.II相試験は2008年よりStage IIIおよびIVを対象として施行されており,主要評価項目は組織学的根治度である.今回の対象は2008年1月より胆管癌として手術企図された186例とした.【結果】症例の内訳は,NACRAC例が22例,ネオアジュバント以外の術前治療例が8例,手術企図にて開腹した156例(切除例141例,試験開腹例15例)であった.NACRAC22例の内訳は,男性16例,女性6例,平均年齢66歳(中央値70歳)であった.腫瘍の主座別に肝門部・上部と中下部の2群に分けると,それぞれ15例,7例であった.そのうち19例に開腹手術が施行され,18例が切除(1例が術後に膵癌と診断) ,1例が癌性腹膜炎で非切除であった(非手術3例).術後に膵癌と診断された1例を除いた18例中16例がcurA,2例がcurBであった.周術期因子を検討すると手術時間,出血量,在院日数には差が無く(NACRAC vs非NACRAC: 手術時間 627ml vs 628ml, 出血量 1673分 vs 1950分,術後在院日数 46.8 日 vs 39.8日),また肝不全,SSI,胆管空腸縫合不全などにも差が無かった.主要評価項目のpCurA+Bについて対照群のsStageIII, IVと比較すると,NACRAC群が13例(62%.13/21,膵癌1例を除く),非NACRAC群が36例(36%,36/99)であり,統計学的に差を認めた(p<0.05).【結語】術前化学放射線療法は,安全と考えられ,中間解析での組織学的治癒率は良好であり,試験継続に値する.今後,再発率および生存率から効果を検討し,集学的治療としての術前化学放射線療法の確立を目指していく予定である.
索引用語 胆管癌, ネオアジュバント