セッション情報 ワークショップ1(消化器がん検診学会・肝臓学会合同)

超音波検診の目指すべきもの

タイトル 検W1-1指:

腹部超音波検診 ―今後何をすべきか―

演者 小野寺 博義(宮城県立がんセンター・消化器科)
共同演者 小野 博美(宮城県対がん協会), 手嶋 紀子(宮城県対がん協会)
抄録 【目的】腹部超音波検診が開始されて35年が経過し広く全国に普及したが,エビデンスが追求・蓄積されず,学問的(検診学的)な裏付けのない状態が続いている.その事実を踏まえ,今後何をすべきかを考える.【方法】宮城県対がん協会の超音波検診でのデータの検討,特に検診発見がん症例の予後を宮城県立がんセンターでの病院発見がん症例と比較し考察する.また,主に日本消化器がん検診学会誌に掲載された超音波検診に関する文献や公表されている罹患率のデータ等を用いて,今後の超音波検診に必要な検討課題について考える.【結果】超音波検診での発見率(%),5年,10年,15年,20年生存率(%)は,肝細胞がん0.029,43.0,21.8,13.1,13.1,肝内胆管がん0.0047,34.3,34.3,34.3,34.3,胆のうがん0.0086,53.8,53.8,46.2,36.9,膵がん0.006,11.1,0,0,0,腎細胞がん0.028,95.2,91.4,77.4,54.2であった.膵がん以外は検診発見例が病院発見例より有意に予後良好であった.なお,病院ハイリスク管理群からの発見肝がんと検診発見肝がんの予後に有意差はなかった.【結論】罹患率,発見率から超音波検診は対策型検診とはなりえない.なかには早期発見・早期治療により死亡を免れたと思われる症例もあることから,任意型検診や人間ドックでは有用である可能性がある.「超音波検診」と一括りとして考えずに,臓器ごとに対策を考えて超音波検査の必要性を臓器ごとに検討すべきである.肝細胞がん,膵がんでは健診でハイリスク群拾い上げて医療に結びつけることも重要である.さらに,精度管理のために健診機関と病院の連携を確立しなければならない.評価については現時点では三「た」論法であり,今後は発見がん症例登録制度を含めた精度管理を充実し,多施設共同研究などにより症例を集積して一から検証していかなければならない.
索引用語 腹部超音波検診, 精度管理