セッション情報 ワークショップ1(消化器がん検診学会・肝臓学会合同)

超音波検診の目指すべきもの

タイトル 検W1-3:

腹部超音波がん検診評価における問題点

演者 水間 美宏(神戸アドベンチスト病院・消化器内科DELIMITER京都府立医大大学院・地域保健医療疫学)
共同演者 福島 豊実(神戸アドベンチスト病院・消化器内科), 渡邊 能行(京都府立医大大学院・地域保健医療疫学)
抄録 【目的】腹部超音波がん検診評価のため,腹部超音波がん検診基準(実施基準,判定基準)が定められ,判定基準により得られた所見に対する事後指導も議論されている.今後は基準に沿って実施された検診について,その精度や,発見がんの病期,生存率,治療法などを検討していくことになろう.しかし,精度を求めるにも発見がんや偽陰性がんの定義はなく,また,発見がんの病期の記載方法も標準化されていないため,このままではせっかく得られた結果を正確に評価できないことになりかねない.そこで,今回,過去の文献を検討し,腹部超音波がん検診評価の問題点を明らかにした.【方法】医学中央雑誌WEB版とPubMedを用いて,目的にあう文献を抽出した.また,日本消化器集団検診学会雑誌と日本消化器がん検診学会雑誌から目的にあう文献を見出した.【成績】発見がんでは,転移性肝がんや対象臓器以外のがんを含めるかが,精度の差となっていた.偽陰性がんでは,検診で「異常なし(精検不要)」とされた例が1年以内にがんと診断された例と定義したものが多かったが,1年後の検診で診断されたがんを偽陰性としない文献もあった.発見がんの病期では,肝では原発性肝癌取扱い規約と地域がん登録研究班による進展度が用いられ,胆嚢と膵ではそれぞれ胆道癌と膵癌の取扱い規約が用いられていた.腎では,UICCのTNM分類,ロブソン分類,腎癌取扱い規約,地域がん登録研究班による進展度と多岐にわたった.【結論】腹部超音波がん検診では原発巣だけでなく,肝やリンパ節の転移,がん性腹膜炎による腹水や,対象臓器以外の悪性腫瘍も発見されることから,発見がんの定義は難しい.また,肝,胆,膵,腎など自然史の異なる種々のがんが発見されることから,偽陰性がんの定義も容易ではない.さらに発見がんの病期も記載方法は様々で,比較は容易ではない.今後,腹部超音波がん検診基準によって集積された結果を正しく評価するために,これらの問題点を解決しておく必要がある.
索引用語 超音波, がん検診