セッション情報 ワークショップ1(消化器がん検診学会・肝臓学会合同)

超音波検診の目指すべきもの

タイトル 検W1-4:

癌の早期発見を目指した超音波検診の現況

演者 長川 達哉(札幌厚生病院・2消化器科(胆膵科))
共同演者 松薗 絵美(札幌厚生病院・2消化器科(胆膵科)), 宮川 宏之(札幌厚生病院・2消化器科(胆膵科))
抄録 【目的】腹部超音波検診にて発見された肝胆膵領域癌の成績ならびに予後,事後管理(精検システム)の問題点を検討した.【対象および方法】1985年4月より2011年3月までの間に当院施設検診を受診したのべ378131名を対象とした.当院の検診システムは日本消化器がん検診学会の実施基準にほぼ準じているが,記録法は有所見部の静止画のみであり,院内の読影委員会で定期的に改訂した判定基準を用いている.【検討項目】1) 検診成績(有所見率,要精検率,精検受診率,癌発見数),2)検診発見癌の予後(病院受診群との比較),3)精検受診率(所見別),4)精検受診者における癌および腫瘍の陽性適中率【結果】1)全受診者における有所見率75.6%,要精検率5.2%,精検受診率72.0%,肝胆膵領域の発見癌は75例(肝細胞癌21,転移性肝癌13,胆嚢癌8,膵癌20,その他13)2) 胆嚢癌では検診群の生存期間中央値34.3ヶ月,5年生存率38.3%と病院受診群(それぞれ4.9ヶ月,4.2%)に比して予後は良好であり(p=0.028),膵癌においても検診群の生存期間中央値30.6ヶ月,5年生存率31.3%と病院受診群(それぞれ11.0ヶ月,7.8%)に比して予後は良好であった(p=0.018).3)所見別の精検受診率は胆管拡張90.9%,胆嚢腫瘍76.5%,膵腫瘍81.5%,膵管拡張82.9%,膵嚢胞87.9%であり,胆嚢ポリープおよび腺筋腫症など良性疾患ではそれぞれ70.6%, 71.4%と受診率は低かった.4)精検受診者における癌および腫瘍の陽性適中率はそれぞれ3.3%, 12,6%であり,癌以外の腫瘍性病変としては肝異型過形成,胆嚢腺腫,膵内分泌腫瘍,膵管内乳頭粘液性腫瘍が含まれていた.【まとめ】当院の超音波検診にて発見された肝胆膵領域癌は75例であり,胆嚢癌および膵癌では病院受診群よりも良好な生命予後であった.事後管理では良性疾患の精検受診率が低く,過去の精検受診歴や経時的変化を踏まえた判定が必要である.また,超音波検診では前癌病変,境界病変とされる腫瘍性病変が癌よりも高率に発見されており,これらを視野においた判定基準も検討すべきと考えられた.
索引用語 超音波検診, がん検診