セッション情報 ワークショップ1(消化器がん検診学会・肝臓学会合同)

超音波検診の目指すべきもの

タイトル 検W1-6:

がんと生活習慣病診断のための腹部超音波検診 -腹部超音波がん検診基準と人間ドック事後指導区分を比較して―

演者 大洞 昭博(朝日大村上記念病院・総合健診センター)
共同演者 小島 孝雄(朝日大村上記念病院・総合健診センター), 加藤 隆弘(朝日大村上記念病院・総合健診センター)
抄録 【目的】がんと生活習慣病診断のための腹部超音波検診の精度向上を目指し,日本消化器がん検診学会の腹部超音波がん検診基準カテゴリー分類と日本人間ドック学会の腹部超音波検査所見判定を用いた結果判定を比較検討した.【方法】2010年に腹部超音波検診を受けた11702例(男性7109例,女性4593例,平均49.0歳)の画像データを前情報をblindにした状態でretrospectiveに,がん検診基準とドック学会基準を用いて再度判定した.【結果】肝臓5211例(44.5%),胆道3180例(27.2%),膵臓194例(1.3%),腎臓2582例(22.1%),脾臓63例(0.5%)に所見を認めた.がん検診基準カテゴリー3以上は,肝1.14%,胆道2.37%,膵0.53%,腎0.44%,脾0.18%.ドック基準D判定は,肝2.08%,胆道0.83%,膵0.49%,腎0.96%,脾0.19%.全体の要精査率はほぼ同等.臓器別では,肝や腎では,がん検診基準の方が有意に低く,胆道では有意に高かった(何れもp<0.001).ドック基準は20mm以上の肝血管腫や腎血管筋脂肪腫がD判定,がん検診基準の胆嚢ポリープ5mm以上でカテゴリー3となる判定基準が要精査率に関係していた.膵の石灰化と嚢胞の判定が両基準で異なるが,全要精査数は,ほぼ同数.肝腫瘍と診断した94例中非典型肝血管腫(3´や4´)が60例含まれ,検診発見癌は,肝癌1例(ドック判定/がん検診判定=D/3),胆嚢癌1例(D/4),膵癌1例(D/3),腎癌3例(全例D/4)であった.【結論】(1)がん検診基準は観察すべき点を詳細に示し,術者や施設間格差を減らし,検査精度が上昇する可能性が高いが,過去の超音波画像以外の情報を加えた診断の記載は必要.(2)カテゴリー3でも癌が発見され,初回精査必要で3(初回精査)と記載することやカテゴリー2の中でもメタボリックシンドロームと関連性が高い脂肪肝や胆石等(ドック判定C)の生活指導は必要で2(要生活指導)と記載することし,がん検診基準を元にした生活習慣病も考慮した記載を提案したい.
索引用語 腹部超音波がん検診基準, 腹部超音波検診